こんにちはなんくるナイトです。

かつては国立に6万人を集めた早明戦など古くから国内のラグビー人気を牽引してきた大学ラグビー。

しかし、ここ最近は正月に行われる大学選手権準決勝、成人の日に行われる決勝でもスタジアムを満員にする事が出来ません。

今日はここ10年の大学選手権決勝の観客動員数推移を見ながら、大学ラグビーの人気変遷を見ていきたいと思います。

 

決勝戦観客動員数(2006~2016年)

第43回大会(2006年度)

<決勝>

関東学院大 ○33-26 早稲田大

観客数 31,954人

 

第44回大会(2007年度)

<決勝>

早稲田大 ○26-6 慶應義塾大

観客数 23,694人

 

第45回大会(2008年度)

<決勝>

早稲田大 ○20-10 帝京大

観客数 22,344人

 

第46回大会(2009年度)

<決勝>

帝京大 ○14-13 東海大

観客数 17,569人

 

第47回大会(2010年度)

<決勝>

帝京大 ○17-12 早稲田大

観客数 25,458人

 

第48回大会(2011年度)

<決勝>

帝京大 15-12 天理大   

観客数 14,407人

 

第49回大会(2012年度)

<決勝>

帝京大 39-22 筑波大   

観客数 20,050人

 

第50回大会(2013年度)

<決勝>

帝京大 41-34 早稲田大  

観客数 27,224人

 

第51回大会(2014年度)

<決勝>

帝京大 50-7 筑波大   

観客数 12,107

 

第52回大会(2015年度)

<決勝>

帝京大 27-17 東海大   

観客数 16,669人

 

第53回大会(2016年度)

<決勝>

帝京大 33-26 東海大   

観客数 13,776人

 

時代別背景

2000年前半(早稲田、関東学院2強時代)

2000年台前半は早稲田と関東学院のライバル対決が熱かった。

早稲田は清宮監督(現ヤマハ発動機監督)関東学院は春口監督。この名物監督の場外舌戦もライバル関係を大いに煽り、2001年から2006年まで6年連続でこの両校が覇権を争うなどまさに2強時代を形成。(※早稲田清宮監督は2005年の優勝を最後に勇退し、2006年からは中竹監督が引き継ぐ。)

清宮監督の人心掌握術、選手だけでなく、スタッフ、ファンを巻き込む力には舌を巻きます。

観客動員数もこの時期は3万人越えとこの2校が大学ラグビーの人気を牽引し、ラグビーファンを大いに沸かせていた事は数字にも表れている。

2007年(ラグビー界に激震)

この年はラグビー界を揺るがす大きな事件があった事はファンの間では記憶に新しい。

そう、関東学院の”大麻事件”だ。

リーグ戦も終盤に差し掛かった11月、ラグビー部に所属する2名の選手が大麻栽培・使用容疑で逮捕・起訴されたのだ。さらに他にも12名の部員が大麻使用を認めた事を受け、関東学院はそれ以降の対外試合を自粛、大学選手権への道が突如閉ざされた。この不祥事の責任を取って、無名だったチームを全国トップクラスに育て上げた名将春口監督は辞任。

前年度優勝チームが部員の不祥事により選手権出場辞退、まさにラグビー界に激震が走った瞬間だった。

これにより早稲田、関東学院の2強時代は終わりを告げ、その年の決勝は早稲田、慶應の人気カード”早慶戦”であったにも関わらず、観客動員は前年を大きく下回る23,000人。大学ラグビー人気に陰りが見え始める。

2008年(早稲田2連覇も...)

前年度選手権を制した早稲田がこの年も強さを発揮。決勝では創部以来初めて決勝に勝ち進んだ帝京を20-10と下し連覇を達成。人気、実績ともに大学ラグビー界No.1である早稲田の2連覇にも関わらず、観客動員数は22,000人と前年をさらに下回る結果に。

その当時安定的な強さを誇っていた関東学院不在の影響は思いのほか大きく、決勝戦も本当の意味での頂上決戦ではなく”仮”がついているような印象だったのを覚えている。

優勝目指して苦しい鍛練を積み重ねた選手たちには本当に申し訳ないが、

”関東学院がいたら結果はどうだったんだろう”

そんなファン心理が観客動員数に現れていたのかもしれない。

 

2009年~2013年(帝京の黄金時代始まる)

2009年は前年早稲田に決勝で敗れた帝京が2度目の挑戦にして初優勝を果たした年だった。決勝の相手はいわゆる伝統校ではなく新興校の類に入る東海。1点差を争う好ゲームが繰り広げられたが、観客動員数は歯止めがきかず、17,000人。この年ついに2万人を割ってしまう。

その年以降、大学ラグビーは帝京連覇の軌跡となり、ライバル不在の状況が続いていく。決勝戦では2011年の天理戦など今でも語り継がれる程の熱い試合も繰り広げられたが、早稲田が決勝まで進出した年以外は殆どが2万人割れと、6万人収容の国立で空席が目立ってしまうという寂しい結果になっている。

中でも近年の決勝で最少を記録した2011年の14,000人は、その年の9月に開催されたラグビーW杯における日本代表の惨敗も少なからず影響しているのかもしれない。

 

2014年~(舞台は秩父宮へ)

この年から国立競技場がオリンピックに向けた全面改修に入った関係で、決勝の舞台は秩父宮ラグビー場に移されて実施される事となった。

ただ、秩父宮元年となった2014年はいきなり最少を更新する12,000人。帝京に相対するは近年大きく躍進を遂げた”国立の雄”筑波だったが、この年の帝京はその後の日本選手権でトップリーグ所属のNECを破るなどシーズンを通して圧倒的な力を見せていた年でもあり、決勝の点差から見ても両校の力関係は明らかだった。

そして、ここ最近の2年間は帝京と東海の2強時代に突入。早稲田、関東学院のような新たなライバル関係が生まれているが、W杯の日本代表の大躍進によりラグビー熱が高まった2015年、さらに帝京が連覇を続ける中で東海が最も王者に迫る強さを見せるなど戦前から盛り上がりを見せた今年ですらも、残念ながら観客動員数には反映されない結果となっている。

 

人気復活への光も

最近は日本代表の躍進、2019年に予定されている自国開催のW杯など、ラグビー界には追い風が吹いている。しかし国内メイン会場である秩父宮で行われた今季の試合において、観客動員数でトップを記録したのはトップリーグでもサンウルブズでもなく早明戦(21,916人)だ。

ラグビー界の人気は今も昔も大学ラグビーが牽引しているのは疑いようのない事実だ。(※今季の最多観客動員は味の素スタジアムで行われた日本代表ースコットランド代表の34,073人)

大学ラグビーの衰退は日本のラグビーにおいて人気だけでなく強化にも大きな影響を及ぼす。

しかし、もちろん光もある。

既に孤高の存在になりつつある王者帝京だが、ラグビーそのものの質は一切停滞することなく年を追うごとにますます磨きがかかっている印象だ。そして王者の背中を追いかけるライバル校もそれに応じてレベルがどんどん上がってきている。今年の帝京対東海の決勝はまさに”頂上決戦”に相応しい内容で、久しぶりに見ていて鳥肌が立つような興奮と緊張感を感じさせてもらった。

しかし、グラウンドで繰り広げられている熱戦と観客動員数がなかなか比例しないのが現状だ。やはりよりファンを惹きつけるためにはその決戦に臨む”ストーリー”が必要だろう。”伝統校復権をかけて絶対王者に挑む!”、”東西に割拠する王者包囲網!”などなど。

もちろんそれを伝えるには取り上げるメディアの協力が必要不可欠だが、昨年の日本代表の大躍進、サンウルブズのスーパーラグビー参戦などによりシーズンオフが短くなると共に、少なくとも以前よりはメディア媒体への露出は増えてきているように思う。

しかし、取材に訪れるメディアに対して通り一辺倒の回答では”ストーリー”は生まれにくい。”ストーリー”を作り上げるのはメディアの役割かもしれないが、発信していくのは監督、選手、スタッフ、協会関係者など当事者にしか出来ない事だろう。

結果を出しさえすればファンはおのずとついてくる、これは”いい製品を作りさえすれば消費者はついてくる”という旧態依然の日本企業文化と重なる考え方だ。”消費者志向”ならぬ”ファン志向”の導入へ。

ここはメディア戦略の第1人者ヤマハ清宮監督、そして現役選手でありながら限られた時間で情報を発信し続ける、田中史朗選手、堀江将太選手、山田章人選手(全てパナソニック)などをお手本にしたい。

そして最後に、やはり待たれるのは帝京、東海この2校に追随する早稲田、明治、慶應、同志社など伝統校の復活だろう。いつの時代もこれらのチームが強かった時というのはスタンドもやはり特別な雰囲気を発する。

来季、ベスト4にこの3校が絡み、帝京に肉薄するような活躍を見せる事が出来れば、観戦の場がテレビになってしまったラグビーファンを、再びスタジアムに呼び戻す事が出来るのではないだろうか。

是非期待したい。

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