こんにちはなんくるナイトです。

ついに決勝戦を迎えた全国高校ラグビー。

2週間の戦いは本当にあっと言うまですね。

決勝に残ったのは春の選抜大会、セブンスを制し高校三冠を目指す”ヒガシ”こと東福岡、そして対するは前年度覇者の東海大仰星、今大会はBシードながら花園で大きく成長し連覇を狙える位置までチームを引き上げてきました。

どちらも近年の高校ラグビー界を引っ張る横綱同士。

高校の頂点を決めるに相応しい最高の決勝でした。

第96回全国高校ラグビーフットボール大会 決勝

赤字Aシード 青字Bシード

東福岡(福岡) 28-21 東海大仰星(大阪第1)

試合序盤は東福岡がペースを掴み、鋭い縦突破から幾度も仰星ゴール前へ迫る。しかし攻めても攻めても仰星ディフェンスを崩せず、得点はCTB森選手の個人技からのトライのみ。

逆に前半終盤は仰星ペースに。怒涛のように敵陣ゴール前へ迫り東福岡へプレッシャーをかける。しかし東福岡の決死のタックルの前にハンドリングミスを連発しチャンスを逸し続けると、ロスタイムのモール攻撃もインゴールでプレッシャーを受け結局グラウンディング出来ず無得点。7-0で前半を折り返す。

後半も最初の得点は東福岡。WTB焼山選手が密集の隙を突き、こちらも個人技でゴールラインまで持ち込み追加点。

しかし、ここから仰星の猛攻が始まる。後半6分、リードを許して吹っ切れたか一人一人が前へ前進し始め、敵陣左の展開からフォワード陣のパス交換から最後はWTB宮崎選手の手にわたり大外へトライ。難しい位置からCTB松本選手の見事なゴールで7-14。

これで完全に息を吹き返した仰星は一人一人がスピードを持ってどんどん前に出始め、次々にゲインラインを突破し一気にゴール前へ。後半10分、敵陣ゴール前の密集からHO島田選手を劣りに使いFL山村選手がそのまま持ち込みトライ。再び難しい位置からCTB松本選手がゴールを決めついに同点。

花園の盛り上がりは最高潮に。

いけいけの仰星の勢いは止まらない。ボールを動かすペースをどんどん上げ、東福岡のディフェンスを翻弄していく。浮足立つ”ヒガシ”に攻める仰星、王者とチャレンジャーの立場が逆転した瞬間だったが、一つのミスが全ての流れを変える事に。

後半13分敵陣へ攻め込んだ仰星は人数が余ったのを確認し右へ展開、ボールをキャッチしていれば一気にゴール前へというところで、まさかのノックオン。ボールを拾った東福岡はそこから左へ展開し、WTB焼山選手が大外をブレイクし、ゴールラインぎりぎりのところでフォローに走ってきたCTB堀川選手へリターンパス。仰星のディフェンスは追いかけるコースが被り、味方同士でぶつかってしまい、堀川選手の前には誰もいない状態に。そのまま50mを走り切り勝ち越しのトライ。

これで落ち着きを取り戻した東福岡は3分後にもトライを追加し引き離しに成功。その後の仰星の反撃を25分の1トライに抑え、長く険しい戦いを制し、三冠達成の瞬間を迎えた。

 

戦評

何てレベルの高い戦いでしょうか。

タックル、ハンドリングスキル、ゴールキックの精度、ブレイクダウンの激しさ、バッキングディフェンスのスピードと正確さ、どれを取っても高校生のレベルを超越していました。

しかし、東海大仰星にとっては残酷な結果となってしまいました。

仰星の生命線は強固なディフェンスと確実なボールキープからフォワード、バックス一体となった全員ラグビーです。当たり前の事を当たり前に、そしてそれを全て高いレベルで遂行出来るところが仰星ラグビーの真骨頂ですが、この試合は前半からいくつか重要な局面でノックオンなどの小さいミスを連発し、自分たちでチャンスを失う場面が多く見られました。

そしてやはり、勝敗の分かれ目となってしまったのも後半13分いけいけの雰囲気の中でのノックオン、さらに終了間際29分敵陣ゴール前でのノックオンでした。ここまでのミスは仰星のレベルからすればなかなか考えられない事です。自慢のハンドリングが乱れるほど東福岡の圧力は相当のものだったという事でしょう。

仰星キャプテンFL山田選手はノーサイドの瞬間から涙が止まりません。「出れない選手含め、応援してくれる人に悲しい顔はさせたくない」試合前にこう語っていたように、中等部、高等部総勢140名を束ねる男は責任感も人一倍、全ての責任を背負い込んでいたのでしょう。

しかし、前年度覇者というプレッシャーの中で、春の選抜では準決勝で桐蔭学園に敗れ、大阪予選でも苦戦し花園はBシード。大阪3校(常翔学園、大阪桐蔭、東海大仰星)の中では”3番手”と揶揄される声もある中で、花園で一戦一戦成長しここまでチームを引き上げてきました。

残念ながら連覇は果たせませんでしたが、誰が彼らを責める事ができるでしょうか。若き名将湯浅監督の指導力には毎年頭が下がる思いですが、山田主将のキャプテンシーも本当に見事でした。1年間お疲れ様でしたと心から言いたいと思います。

そして、仰星の応援スタンドにはラグビー部員だけでなく野球部、柔道部など他クラブの部員の姿も見えました。そして最後の挨拶の時は全ての部員がお客様へ向かって一礼。

なんて美しい姿。

学内でも愛されるラグビー部、ラグビー部憲章に記された”結束”の名の通り、仰星ファミリーは負けてもなお、ラグビーの持つ素晴らしい精神を心に刻みつけてくれました。

感動をありがとう!

 

そして東福岡。

高校三冠達成おめでとうございます。

新チーム発足以降圧倒的な強さを誇り、春の選抜、セブンスを制し、国内チームには負けなし。今大会は圧倒的な力で制するのではないか、と見られていました。しかし、準々決勝で京都成章に、準決勝で御所実、そしてこの決勝では東海大仰星の必死のチャレンジの前に大苦戦。”花園”が決して甘くない場所だと改めて感じた事だと思います。

しかし、箸本キャプテンを中心に一人一人が体を張ったプレーで、それをことごとく跳ね返し、見事に頂点まで登り詰めました。勝って当たり前と言われる計り知れないプレッシャーの中で、こうしてしっかり結果を残すメンタルと日々の準備の積み重ねは見事の一言です。

ひょうひょうとした面持ちながら部員一人一人に気を配る熱血漢の藤田監督、そしてプレーでも統率力でも圧倒的な存在感を誇る箸本キャプテン。全国から才能あふれる素材が集まるタレント集団ながら、驕らない心、ラグビーへ真摯に取り組む姿勢、相手を敬う気持ちは、”ヒガシ”の伝統はもちろんの事、この二人から作り出されるものでしょう。お互いの信頼の下、ワンチームとしてチームを結束させる手腕とキャプテンシーは本当に素晴らしいと思います。

藤田監督の胴上げの後、二人で抱き合いそして握手をした瞬間の二人の笑顔、二人の信頼関係を如実に表しているような印象的なシーンでした。

これでまた来年は追われる立場。各高校が”打倒東福岡”で挑んでくることでしょう。

それをどう跳ね返し、常勝”ヒガシ”の黄金時代を作っていくか、今から来年が楽しみです。

 

戦いの後で

決勝戦はまさに死闘の名に相応しい手に汗握る素晴らしいゲームでした。

勝った東福岡は2年ぶり6度目の優勝。春の選抜、高校セブンスに次ぐ、”高校三冠”をこちらも2年ぶりに達成しました。

さらに東福岡の今大会の総得点311得点は2大会前に同校が記録した298得点を上回る大会最多得点を更新。名実ともに”史上最強”を証明した形となりました。

今大会は東福岡の三冠、東海大仰星の連覇に初出場の旭川工業(北北海道)、玉島(岡山)、そして64年ぶり出場の山口(山口)、39年ぶり出場の松山聖陵(愛媛)など話題盛りだくさんの大会でした。

本戦でもBシード秋田工を撃破した報徳学園(兵庫)に同じくBシード国学院栃木と同点ながら抽選で”シードバック”を果たした日本航空石川(石川)などノーシードの躍進も大会を盛り上げてくれました。

ラグビーが盛んな関西、福岡などの有力校と地方に属する高校との地域格差は依然としてありますが、花園を目指しながら敗れていったチーム、そして出場を果たしたチームにはそれぞれストーリーがありそれぞれ夢があります。私は現役時代、残念ながら花園の地は踏めませんでしたが、花園を目指して辛く厳しい練習を乗り越えた経験は今も自分の財産です。

そこには地域格差も入試制度も関係ありません。

”花園から世界へ”

いつの世も高校ラガーにとっての”聖地”であり、夢を見させてくれる場所であってほしいと心から願います。

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