先週開幕した”春の高校日本一”を決める選抜大会。
予選グループの全日程が終了し、決勝トーナメント(ベスト8)進出校が出揃いました。
予選グループの詳細はこちら⇒【高校ラガーの春開幕!】高校ラグビー選抜大会2017 激闘の軌跡①予選グループ
ここでは準々決勝以降の対戦カード、見どころ、結果速報など春の頂点決定までの軌跡を追っていきたいと思います。
準々決勝
準々決勝対戦カード
2017年4月6日 | 佐賀工 | ー | 石見智翆館 |
春日丘 | ー | 桐蔭学園 | |
京都成章 | ー | 大阪桐蔭 | |
国学院久我山 | ー | 東福岡 |
見どころ
<第1試合 佐賀工―石見智翆館>
予選グループで“高校ラグビー界の横綱”東海大仰星を秘策“13人モール”で見事撃破した佐賀工。
2年連続花園準優勝の実績がある伝統校も近年は低迷し、全国では結果を残せていません。
しかし、仰星を下した後の仙台育英戦も47-8としっかり勝ち切ったあたり、目標を見据え地に足をつけてしっかりと戦えている印象です。
花園シード校レベルの石見智翆館を破り、本当の意味での“古豪復活“を印象付けて欲しいところです。
一方の石見智翆館は予選グループを危なげなく3連勝で通過。
組み合わせに恵まれた感もありますが、難敵西陵、札幌山の手を一蹴したあたり、やはり今年も攻守にバランスのとれたいいチームという印象です。
毎年上位には顔を出しますが、なかなか頂点に立つことは出来ずにいますので、ベスト8の壁を破り、準優勝した2012年以来の準決勝、決勝進出を目指したいですね。
<第2試合 春日丘―桐蔭学園>
“東の横綱”桐蔭学園の相手は春日丘に決定しました。
関東王者対東海王者こちらも楽しみな戦いになりそうです。
春日丘は予選グループ最終節で、下馬評を覆し1位通過本命の大阪朝鮮を撃破し波に乗っています。
大注目のSH鈴村選手が横綱相手にどのようなゲームコントロールを見せるのか。
ここにも注目したいですね。
桐蔭学園は優勝した関東大会から接戦知らずの圧倒的な内容でここまで辿り着いているところが逆に気がかりです。
春日丘はこれまでの相手とは一味違います。
実力は疑いようがありませんが、伏兵に足元をすくわれないように気を引き締めて臨んでもらいたいところ。
<第3試合 京都成章―大阪桐蔭>
先日行われた近畿新人大会決勝戦の再戦がここで実現してしまいました。
どちらも優勝候補に挙げられるほど今年は戦力、戦術共に充実していますので、ここで当たってしまうのは惜しいような楽しみのような複雑なカードです。
決勝戦では先行した京都成章に大阪桐蔭が終盤に追いつく形で優勝を分け合っています。
真の近畿王者はどこか!?
雌雄を決する絶好の場になります。
<第4試合 国学院久我山―東福岡>
関東大会準優勝の久我山が去年の高校“三冠”王者東福岡に挑む事となりました。
昨年度は花園出場を逃すなど、最近は全盛期ほどの活躍を見せられていない久我山ですが、関東第2シードとして迎えた今大会では日本航空石川、長崎南山といった難敵を接戦の末に破っており、最近目立っていた“全国での脆さ”を払拭する活躍を見せています。
しかし、相手は“絶対王者ヒガシ”。
序盤からフィジカル勝負で奮闘できなければ、前半から圧倒された関東大会決勝の桐蔭学園戦(0-69)の二の舞もありえると考えています。
今のところ、東福岡に死角はありませんが、U18ヨーロピアンチャンピオンシップに参加するため、No.8福井主将、ハーフバック団を始め主力8人が不在。
この状況で連覇を目指すのは正直厳しいと言わざるをえませんが、同じメンバーで臨んだ予選グループ最終戦で埼玉の強豪深谷を圧倒した戦いぶりを見る限り、選手層の厚さでカバーしてしまいそうな予感もします。
ただ、逆にこのレベルの戦いで今のヒガシと接戦を演じるチームが現れないようでは、東福岡の2年連続“三冠”も現実味を帯びてきます。まずは久我山の意地に期待したいですね。
試合結果
2017年4月6日 | 佐賀工 | 33ー21 | 石見智翆館 |
春日丘 | 0 ー60 | 桐蔭学園 | |
京都成章 | 19ー17 | 大阪桐蔭 | |
国学院久我山 | 34ー54 | 東福岡 |
<第1試合 佐賀工 33-21石見智翠館>
予選グループで東海大仰星を撃破した佐賀工でしたが、この日は仰星戦で見せた執拗なディフェンスと低く鋭く突き刺さるタックルが見られず、智翆館の強力なランナーに自由に走られ前半だけで26失点と圧倒されてしまいました。
体格に劣る佐賀工としてはディフェンスで体をはりロースコアへ持込み、数少ない得点機を確実に得点へ結び付けたいところでしたが、生命線のディフェンスが崩壊。
全体的に体が重い印象でやはり仰星戦にピークを迎えてしまい、燃え尽き症候群に陥ってしまった印象でした。
それだけ佐賀工のようなチームにはこの日程が過酷だという事の表れかもしれませんが。。。
それでも、試合終盤には今大会佐賀工の代名詞となった“13人モール”でトライを奪うなど、間違いなくこの選抜大会に確かな足跡は残しました。
来たる夏冬シーズンに向けて更にフィジカルを強化し、花園では新たな佐賀工の歴史を刻む活躍を見せてほしいと思います。
一方の智翆館はやはりフォワード、バックス共に隙がなくバランスのとれたチームに仕上がっています。
中でも強固なディフェンスは特筆ものです。
準決勝以上はどこも強力フォワードを擁するチームばかり。
このディフェンス力を武器にどこまで勝ち進む事が出来るのか非常に楽しみです。
<第2試合 春日丘0-60桐蔭学園>
ここまで桐蔭学園が圧倒するとは想像もしていませんでした。
近畿大会ベスト4の強豪大阪朝鮮を破るなど、予選グループを見ている限り春日丘の充実ぶりが目立っていたので、比較的楽に予選グループを突破した桐蔭学園に付け入る隙があるかと思っていましたが。。。
強力なフォワードを前面に押し出し、タレント揃いのバックスで仕留める。
まさに盤石の”横綱相撲”で春日丘を圧倒しました。
春日丘は注目のSH鈴村選手が前半途中で負傷交代してしまったのが痛すぎましたね。WTB岡本選手が代役を務めましたが、バックスとフォワードのつなぎ役としてゲームをコントロールできる選手を失った事がこの大敗につながってしまったと思います。
鈴村選手は肩の負傷のようですが大事に至らない事を願います。
<第3試合 京都成章19-17大阪桐蔭>
近畿大会で同点のまま優勝を分け合った決勝の再現となった注目の一戦は、京都成章が僅差の勝負を制し、因縁の戦いに決着をつけました。
優勝候補同士の激突に相応しく攻守ともにハイレベルな試合となりましたが、お互いに強力なオフェンスを誇るチームとあり、最後はディフェンス力の差が2点差と言う結果に表れた気がします。
しかし、大阪桐蔭は白を基調としたファーストジャージの時にイマイチ強さを発揮できていないような気がするのは私だけでしょうか。
予選グループの時に着用していたエンジのジャージの時はもう少し大きくて重量感があるように見えたのですが。。。
私の高校も白ジャージでしたが、やはり白という色はどこか軽量感を与える効果があるんでしょうか。(大阪桐蔭と比べるのは申し訳ないのですが。。。)
いずれにしても今年の大阪勢は大阪桐蔭が中心となってくるのは間違いなさそうです。
悲願の花園初制覇へ!
この敗戦を糧にさらなる成長を期待したいと思います。
<第4試合 国学院久我山 34-54 東福岡>
24-0。
開始15分でこのスコア。
しかもリードしているのは東福岡ではなく国学院久我山。
誰がこの展開を予想したでしょうか。
開始早々に敵陣ゴール前スクラムから8サイドで先制すると、その後もラインアウトからのドライビングモール、スクラムからの連続攻撃などセットプレーを起点に押せ押せの3トライ。
浮足立つ東福岡は久我山の気迫のこもったプレーに為す術もありません。
完全なるワンサイドゲーム、、、、となるはずでした。(少なくとも私はそう思いました。。。)
しかし、直後にヒガシがトライを1本返し落ち着きを取り戻すと、その後のキックオフが痛かった。
深く蹴り込んだボールがそのままゴールラインを割り、東福岡ボールのセンタースクラムとなると、そこから連続攻撃であっさりと2トライ目を献上し24-14。
リードしているはずの久我山は明らかに動揺、逆に息を吹き返した東福岡の勢いは止まらずさらに2トライを追加し24-28。
あっという間に立場が逆転します。
前半だけでこれだけ得点と形勢が入れ替わる試合は珍しい。
後半も久我山は2トライは奪うなど意地を見せますが、最後までヒガシの勢いを止める事が出来ず終わってみれば34-54。
これが本当に主力8人を欠くチームなんでしょうか。。。
とにかく一人一人の基本プレーの精度が高い。
普段控えに回る選手たちが大舞台でこのような試合を経験できたことはチームの底上げに大きな意味を持つ事でしょう。
絶対王者“ヒガシ”恐るべしです。
一方の久我山。前半の速攻は見事の一言でした。
この試合に懸けるチームの気迫が見ている方にも存分に伝わってきましたが、思わぬ展開で大量リードを奪ってしまった事が逆にチームを浮足立たせる事となってしまったのは本当に皮肉な結果としか言いようがありません。
それでも今年のチームはこのレベルでも十分に戦えるという自信を得たのではないでしょうか。
まだ、チームは発展途上。真の復活に向けて夏以降の成長に期待したいですね。
準決勝
準決勝結果
2017年4月8日 | 京都成章 | 28ー24 | 東福岡 |
石見智翆館 | 0 ー68 | 桐蔭学園 |
<第1試合 京都成章 28-24 東福岡>
ついに昨年から続いていた東福岡の日本の高校チーム相手に対する無敗記録がストップしました。
記録をストップさせたのは昨年花園準々決勝で東福岡の前に僅差で涙を飲んだ京都成章。
その時は前半のリードを守りきれず、後半に大逆転を許した成章でしたが、この試合ではロスタイムでの認定トライで劇的な逆転勝利を収めました。
後半終盤東福岡に逆転トライを喫した時は、また昨年の再現かという思いが脳裏をよぎりましたが、最後まで諦めず執念の大逆転。
試合開始からワンプレー、ワンプレーにチーム全体で大きな声が出ており、その一体感と気迫が最後の最後に実を結んだ形です。
王者を撃破してついに辿り着いた決勝の舞台、最高の結果を出してほしいと思います。
そして、東福岡。
認定トライの判定は東福岡にとっては酷なものでしたが、その前のプレーでもゴールライン付近でコラプシングを取られており、2度同じ反則を繰り返したという事でやむを得ない判断と言えます。
東福岡はU18ヨーロピアンチャンピオンシップに主力を8人送り出しています。
この大切な時期に主力メンバーを出す事について藤田監督はインタビューでこう語ってます。
「選抜大会はもちろん大切ですが、桜のジャージの重みとは比べられない。
日本代表を目指す選手たちの可能性を指導者が阻害するようなことはあってはならないし、どんな状況も代表を優先するのがスタンダードになるべきだと思う。
選手たちに判断を任せると迷わせると思ったので、監督命令で『行ってこい』と伝えました」(出典:ラグビーリパブリックより)
自チームの成績だけでなく、選手の将来、日本ラグビー界の将来を見据えたこの言葉。
藤田監督の指導者としての器の大きさと生徒たちへの愛情を強く感じますね。
それでも東福岡は8人の2年生がこの日も先発しています。
この時期の2年生という事は3月までは1年生だった選手が半分以上、それでこのレベルの戦いが出来るとは。。。
東福岡底の知れないチームです。
U18の主力組と今回経験を積んだ選手がどのように癒合されていくのか、王者の復活が待たれます。
<第2試合 石見智翠館 0 -68 桐蔭学園>
桐蔭学園が強すぎる。
準々決勝の春日丘に続き、石見智翆館までシャットアウトしてしまいました。
強力なランナーを擁しここまで多彩な形でトライを奪ってきたバックス陣を封じ、フォワード戦でも強烈な圧力をかけ続け格の違いを見せつけました。
予選グループの圧勝で油断するどころか、そこからさらにギアを1つ上げてきた印象です。
関東大会、選抜大会予選グループそして決勝トーナメントの戦いぶりを見る限り、今年の桐蔭学園は“東の横綱“の名に相応しい素晴らしいチームです。
同校悲願の“花園単独優勝”も完全に射程距離でしょう。
これで決勝戦は京都成章との東西王者対決。本当に楽しみです。
石見智翆館も中国大会からここまで順調に連勝街道を歩んできましたが、やはり全国トップクラスとはまだ力の差がある事を痛感した事でしょう。
花園へ向けてもう1ランクチーム力を上げて全国の舞台に戻って来てほしいと思います。
決勝戦
決勝戦結果
2017年4月9日 | 京都成章 | 12ー42 | 桐蔭学園 |
<決勝 京都成章 12-42 桐蔭学園>
予想外の大差がつく決勝となりました。
前半はほぼ互角。
どちらも接点でガツガツ体を当てあう力勝負を挑み、桐蔭がキックとフォワードを中心に前進を図れば、成章はフォワード・バックス一体の展開ラグビーで応戦し、14-7桐蔭リードで後半へ。
しかし、後半に入ると前半から桐蔭の重たく強いフォワードに体を当てられ続けた成章フォワード陣に徐々に消耗の色が。
密集付近のタックル、ブレイクダウンで前に出られ始めます。
それを逃さないあたり今年の桐蔭学園の試合巧者ぶりがうかがえます
ゴール前付近までボールを運ぶとそこからはひたすらフォワードのピックアンドゴーの繰り返し。
穴があくまでこれでもかこれでもかとゴールまでの最短距離を攻め続けます。
結局後半桐蔭が挙げた4トライは全てその形、そしてその内3トライは後半15分以降に畳み掛けたものでした。
これまで鉄壁の守備を誇ってきた京都成章もこの戦略はさすがに堪えたでしょう。
キックで陣地を取り、フォワードで仕留める、見ていて決してスリリングと言える内容ではありませんでしたが、決勝戦という事で内容よりも結果を求める戦略も十分に理解出来ます。
まして、桐蔭学園はこれまで4度の決勝戦はいずれも敗退(00年 9-24仙台育英、07年 12-17伏見工、14年 10-62東福岡、16年 17-33東福岡)。
この試合に懸ける想いは相当のものだったでしょう。
これで桐蔭学園は主要大会初の“単独優勝“をついに手にしました。
一方の京都成章は初の決勝への挑戦での戴冠はならなかった。
10日間にわたって繰り広げられてきた高校ラグビー春の日本一を決める“選抜大会”。
ここ10年ではこの大会の覇者がそのまま花園を制すること実に6度。
それだけこの大会はその年の高校ラグビー界の勢力図を占う意味で重要な大会となっています。
しかし、今年はU18ヨーロピアンチャンピオンシップに日本として初参加する事となり、東福岡のように主力を大量にU18へ送り出している高校が存在するのも事実。
桐蔭学園がそのまま花園を制するのか、フルメンバーとなった王者”ヒガシ”の逆襲はあるのか、京都成章、大阪桐蔭、東海大仰星など近畿勢の巻き返しはあるのか。
今から花園のシーズンが待ちきれませんね。