大学ラグビー選手権決勝 明治大対天理大。

壮絶で記憶に残る戦いだった。

私は先輩が指定席チケットを入手してくれたお陰で、バックスタンド前列の明治側席で観戦。

試合開始2時間前に行って席を確保する必要がある自由席とはエライ違いだった。。。

とにかく、、試合内容の詳細というよりも心に思ったことをただただ書き留めていきたい。

 

大学選手権2018決勝 明治対天理

天理大学

勝敗のカギを握ると思われていたスクラム。

やはり明治の上をいった。

ただ帝京戦のように圧倒するまではいかなかった。

それでも何度かペナルティはもらえた。

開始早々のトライは

スクラム⇒ペナルティ獲得⇒タッチキック⇒ラインアウト⇒サインプレーからHO島根主将がトライ

まさに電光石火の攻めだった。

ただそれ以降、天理の得点はパタリと止まる。

そこには明治の強固なディフェンスがあったのは間違いない。

ただ、スクラムでアドバンテージをもらった場合、攻め方として

・行けるところまでじっくり組み続ける

・笛を吹いてもらう前提でチャレンジングな攻めを選択する

これらの方が明治にとっては嫌だったのではないかと思う。

スクラムでペナルティを獲得した後の、フォワード陣の”雄叫びとハイタッチ”。

この儀式は自軍へ勇気と自信を与える特効薬だ。

特にチームとしてスクラムへのコールが準備されており、スタンドとグラウンドが呼応する関西リーグのチームにとっては尚更だろう。

帝京戦でのその盛り上がりは近くに座っていて凄まじいものがあった。

だがこの試合は同じようにはいかなかった。

ペナルティをもらい有利な立場にいても、その優位性を生かした効果的な攻めが出来なかった。

むしろどこか余裕のなさを感じさせるような...

やはり精神的なプレッシャーは相当なものだったか。

実際、天理は本当の意味での”アウェイ”を味わったことはなかったのではないかと思う。

今年選手権での準々決勝はホーム関西での大東大、準決勝は秩父宮での帝京大

そして、近年コンスタントに上位へ進出してくる天理にとってここ最近の”関東勢”の相手は帝京大や東海大。

長い大学ラグビーの歴史から見てもいわゆる伝統校ではなく、(ファンの方には申し訳ないが、)どちらかと言えばアウトロー的な存在だ。

平日でも練習場に多くのファンが集まったり、宿敵との戦いに”○○戦”という名前が付いたり、戦術指南のために90を超えたご老人が部へ手紙を送ったり、というチームではまだない。

だが、明治という大学はそうなのだ。

歴史を積み上げてきた分だけファンの数は多く、低迷していた時期が長い分だけ行き場のない熱は蓄積されていく。

その思いがこの日多くのファンを秩父宮へ集結させ、その一人一人の勝利への渇望が、天理にとっての”完全アウェイ”を生み出した。

 

一つ一つのプレーに沸き上がる大歓声、見られているプレッシャーに、はやる気持ちは平常心を失わせ徐々に心拍数を上げていく。

お互いにペナルティが少なく、通常の試合よりも”走る”展開となったこの試合。

天理にとっては自分たちの土俵で戦える試合、、のはずだった。

しかし、、

正確無比なSH藤原のパス感覚がズレる(というよりパススピードが明らかに...あるいは怪我でもしていたか)

SO松永のキックも飛距離が伸びない(左膝を陥没骨折、靭帯にも損傷を抱えながらの明治FB山沢とのキック合戦は感動ものだったが...)

何よりも前半のラインアウトの獲得率7分の3(大歓声で指示が聞こえなかったか...)

「アウェイでも戦える準備をしてきた。」

帝京戦後、天理小松監督はそのように話をしていたが、

うねりを上げるほどの大歓声と、相手を飲み込むほどの圧力は疑似で作り出せるものではない。

中立的に見ていた私もスタンドにいて、「これなら明治を応援した方がいいな」と真剣に思ったほど。。。

スタンドにいてもそうなのだからグラウンドレベルで感じるその凄まじさは想像を絶する。

今期初めて追う展開を経験させられた天理にとって、この状況下での17点差は最後まで重くのしかかった。

 

それでも、後半20分を過ぎてからの怒涛の反撃は見事だった。

その中心にいたのはやはり島根主将。

今期フランカーからフッカーへ転向し、スクラムの要としても出色の活躍を見せたこの選手は、

前半早々の先制トライ、

後半の追撃のトライ、

そして5点差に追い詰めるCTBフィフィタのトライにつなげたビックゲイン。

まさに一騎当千、獅子奮迅。

常に唇を流血で赤く染めているこのスキッパーは、ジャージの色の如く、完全にヒールになってしまいそうな”黒衣軍団”を全身全霊で引っ張り続けた。

どれだけの人がこの選手の奮闘に心動かされた事だろうか。

最後は私も電光掲示板にこの選手の顔が映し出されるたび、涙をこらえるのに必死だった。

本当に素晴らしいキャプテンだった。

2011年、あの立川理道を擁した”レジェンドチーム”以来の決勝進出を果たした今期の天理。

再び関東対抗戦勢の壁に阻まれはしたが、今期のインパクトはあのチーム以上だった。

HO島根主将、No.8マキシ、FL佐藤、WTB久保らエース級の活躍を見せた選手らはチームを去る。

それでも15人中7人と約半分のメンバーが残る。

リザーブも入れれば22人中13人だ。

”完全アウェイ”を経験したメンバー、そしてそのスタンドにいたメンバー。

次は彼らがこのチームを率いる番だ。

この悔しさを糧に、必ず来期再びこの舞台に戻ってきてくれることを期待したい。

天理大学、感動をありがとうございました。

心に残る素晴らしいチームでした。

 

明治大学

そして明治大学。

ついにラグビー界の盟主が再び頂点に立った。

もちろん”盟主”の位置づけは人それぞれだろう。

だが、私がラグビーの存在を初めて知ったのは1990年の早明戦。

そう今も語り継がれるあの伝説の名勝負だ。

FB今泉そして、同点ゴールキックを決めたSO守屋が私のヒーローとなり、その瞬間贔屓のチームは”紫紺”ではなく””に決まったが、赤黒がそれを最後に長い低迷期に入っていく一方で、紫紺はそれ以降の7年間で選手権の優勝5度。

多感な中学生、高校生時代を”明治黄金期”と共に過ごした。

その意味では私の大学ラグビーの”盟主”は今も昔も明治大学以外において存在しない。

 

そんなチームが1996年”中興の祖”北島元監督を失って迷走した。

北島体制の後を継いだ監督の不祥事、選手権への連続出場ストップなど苦難に喘ぎ、その間、”関東学院、早稲田の2強”、”帝京連覇”と時代は移り変わっていく。

早明戦での70失点という試合も目の当たりにしながら、

「これでいいのか明治⁉」

と勝手ながら私も憂いている人間の一人だった。

 

それが、

吉田元監督の「明治の矜持を取り戻すメンタルの改善」、

丹羽前監督の「私生活も含めた組織の変革」、

そして田中現監督の「最新のコーチングと頂点へのマインドセット」

を経て今期ついに復活。

その期間実に22年。

 

「お願いだ!」

「頼むよ!」

「逃げ切ってくれ!」

試合最終盤、周りに座る威勢の良かったファンの声がいつしか神頼みに変わるほど、22年という月日は長かったのだろう。

歓喜の瞬間の地鳴りのような歓声は忘れることができない。

それほど、この日のグラウンドとスタンドにはその22年分の想いがぶつかり合い、溢れ返っていた。

福田主将。

この個性派集団をまとめ上げたリーダーシップは見事でした。

やんちゃな印象はそのままでしたが、日本一の笑顔は誰よりも爽やかで輝いていました。

井上リーダー。

いつでも先頭に立って体を張り続けるその姿勢には感服です。

最後整列の時の涙はその苦労を物語っていたのでしょう。

何回ももらい泣きをしてしまいました。。。

忽那選手と松尾選手。

4年生として最後まで正SOの座を争いながら、それぞれが試合で持ち味を発揮するメンタルと技術は流石。

きっとここに来るまで色々な葛藤があったのだと思いますが、リザーブ席に控える松尾選手の笑顔、そして試合後の2人の抱擁に、それらを超越したものを見せてもらった気がしました。

そして明治大学。

22年ぶりの優勝本当におめでとうございます。

いちラグビーファンとして強い明治の復活はとても嬉しく思います。

その反面、ライバルとしては正直脅威に感じています。

だけど、きっと早稲田も負けていません。

来期以降はまたお互い熱い戦いを見せてくれることを期待しています。

1年間本当にお疲れさまでした。

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