新春の1月2日。

ラグビーファンにとっては欠かせないイベントがある。

それは大学選手権準決勝。

真冬の寒風が吹きすさぶ中、2試合を見るのはなかなかハードな事だが今年は絶対に外せないと思い、家族へわがままを言い新年のスケジュールを変更して一人秩父宮へ臨んだ。

客席は写真の通り、開始1時間前には自由席が殆ど埋まってしまうほどの盛況ぶり。

何とかメインスタンド側に1席確保し激戦の2試合を見届けた。

色々な思いが入り交じりなかなか頭の中を整理できていないが、まずは第1試合のレビューを書いてみたい。

 

第55回全国大学ラグビー選手権

準決勝 試合結果

第1試合 明治 ○31-27 早稲田
第2試合 天理 ○29-7 帝京

 

第1試合 早稲田明治

1か月間で2度目の早明決戦となった準決勝第1試合。

対抗戦ではスクラムの劣勢を跳ねのけバックス陣が躍動した早稲田に軍配があがった。

そして迎えた大学選手権。

3回戦で立命館に圧勝、準々決勝でリーグ戦王者東海を3点差で下した紫紺と、準々決勝で慶應義塾をロスタイムの大逆転劇で下した赤黒の両雄はこのステージで再び相まみえる事となった。

”明治のリベンジ”、”早稲田100周年復活V”。

この両校に理屈などは本来不要だが、この試合に臨むストーリー性も十分。

試合内容も”伝統の一戦”に相応しいものだった。

 

追う早稲田に突き放す明治。

対抗戦とは逆の展開となったが、早稲田側としてはライン攻撃時のパスミス、ノックオン、キック合戦でのキックミス、ラインアウトのノットストレートなどミスを連発。

このようなミスを多く犯してしまっては勝つのはなかなか難しい。

今期強みとなっていた正確なブレイクダウンも、明治のプレッシャーの前に人数をかけさせられ、攻めれば攻めるほどフォローが少なくなりカウンターラック、ジャッカルの餌食になる場面も再三見られた。

そして何よりも

35フェイズで取れなかった早稲田と34フェイズで取りきった明治

後半のこの攻防が勝敗を分けた一番のポイントだったと思う。

あそこで取りきっていたら、あそこで守り切れていれば、「たら」、「れば」はいくつも出てくる。

 

ただ、細かい試合展開に関してはここでは触れないでおきたい。

実際、今日に関しては早稲田は完全に負け試合だった。

スクラムは崩壊、イージーなミスも連発、看板の展開力という点でも明治に軍配。

それでも結果は4点差。

最後までどっちに転ぶか分からないスリル満点の展開を見せてくれた。

それで十分じゃないか。

 

今年の早稲田には本当にいい夢を見させてもらった。

振り返ってみれば今年は春季大会日体大戦での衝撃の敗戦からスタート。

それが春を越え、夏合宿を越え、秋を迎える頃には実力校がひしめき合う対抗戦で十分戦えるチームに仕上げてきた。

難敵筑波相手に圧勝劇を見せた開幕戦、敗れはしたが後半華麗なバックス展開を見せてくれた帝京戦、そして早慶戦、早明戦の連勝。

選手権に入っても後半ロスタイムでの大逆転劇に心震わされた早慶戦。

そして今日の早明戦。

どの強豪チーム相手でもフォワードが劣勢に立たされる厳しい状況の中、さらには100周年というプレッシャーと戦いながら、対抗戦優勝(帝京と同率だが)、そして久々の正月越えと結果を残してくれた今季の早稲田。

もちろん頂点へ昇り詰める姿をファンは見たかった。

見れると信じていた。

ただ、、、これ以上何を求めよう。

今シーズン主力を張り続けたメンバーは15人中13人が3年生以下。

リザーブを含めても来期残るメンバーは他校と比べても圧倒的に多い。

4年生には申し訳ないが、”復活優勝”という夢は来期彼らがきっと叶えてくれるはず。

そんな期待を抱かせてくれるチームに成長しただけで今年は十分だ。

SH齋藤、SO岸岡、CTB中野、桑山、WTB梅津、FL柴田、幸重。

優勝を期待され入部してきた”黄金世代”にその夢は託そう。

 

そして、佐藤主将と西田副将。

早稲田の幹部陣で怪我以外で試合に出れない悔しさを味わった選手は、近年存在しなかったと思う。

試合に出れない立場で100人を超える部員を統率するジレンマ、そしてそれが100周年のメモリアルイヤーであればその重責と無念さは相当なものだっただろう。

それでも試合中、試合後の毅然とした態度とコメント、自身のプレーに対するレビューを出来ない中、実直にチームの総括をする姿勢には本当に胸を打たれた。

辛かったろうが、この経験を乗り越えられた人間は強い。

辛楽を達観した目からは”人としての深み”という、これから社会で求められる要素が備わっているように感じた。

来期も主力を張る3年生以下のメンバーには是非こういう姿を学んでほしいと思う。

それこそが彼らが残した財産となるはずだから。

4年生の皆さん本当にお疲れさまでした。

そして感動をありがとうございました。

 

 

そして明治大学。

まずは2年連続の決勝進出おめでとうございます。

今日の勝因は紛れもなくチームディフェンス。

対抗戦では早稲田バックス陣にディフェンスを崩壊させられながら、この日は最大のキーマンCTB中野を見事にシャットアウト。

さらに35フェイズにも及んだ後半早稲田の猛攻をペナルティなく、規律あるディフェンスで防ぎきるなど、選手権に入り福田主将ら4年生を中心にチームとしての一体感が醸成されてきている。

スクラムへのこだわりは残しつつ、展開ラグビーへの切り替えも機を見るに敏。

こうなれば明治は強い。

対抗戦4位の屈辱から下剋上優勝まで残すはあと一つ。

1月12日の秩父宮は昨年の決勝同様、紫紺のファンで埋め尽くされるだろう。

決勝までの10日間、リーダーを中心に最高の準備をして臨んでほしい。

対抗戦代表として早稲田、慶應そして帝京の分もプライドを背負って戦ってくれることを期待したい。

22年ぶりの凱歌まであと一歩。

今年の明治はそれを成し遂げるメンバーと準備は整っているはずだ。

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