7人制の大会を経て、大学ラグビーの春シーズンもいよいよ15人制が開幕の時を迎えました。

春の風物詩として定着し今年8回目を数える春季大会。

昨年は大会創設以来6年連続で優勝を果たした帝京を抑えてこのAグループを制した明治大学が、大学選手権でも激戦を制し頂点へ上り詰めました。

チーム始動の時期とはいえシーズンを占う試金石となるこの大会。

今シーズン各チームはどのようなメンバーで臨み、どのような仕上がりを見せるのか⁉

その軌跡を追っていきます。

 

関東大学ラグビー 春季大会2019

Aグループ顔ぶれ

グループ 順位 学校名
対抗戦A 優勝 帝京大学
2位 早稲田大学
3位 慶応義塾大学
リーグ1部 優勝 東海大学
2位 大東文化大学
3位 流通経済大学

対抗戦からは帝京、早稲田、慶應義塾の3校が参加。

選手権覇者の明治は対抗戦では慶應、早稲田に敗れ4位扱いに沈んだため、今季は下位のBグループを戦う事を余儀なくされます。

王者の姿をここで見られないのは非常に残念ですが、現行のルール下では致し方ありません。

変わって今季Aグループに復帰したのは早稲田

昨年は当大会Bグループでも日体、筑波に敗れるなど春から苦戦を強いられましたが、代表活動で離脱していたメンバーが復帰しチーム力が充実した秋の対抗戦では慶應、明治を破り8年ぶりの対抗戦優勝(帝京と両校優勝)を飾る快進撃を見せました。

昨季の主力メンバーが殆ど残る今季、日本一を目指すのであればこのAグループで上位の成績を残すことが求められます。

 

そしてリーグ戦からは東海、大東文化、流通経済とお馴染みの”リーグ戦BIG3”の3校が参加。

昨季は選手権ベスト4に1校も残れず苦戦を強いられたリーグ戦勢。

明治、早稲田、慶應の復活で充実ぶりが目立つ対抗戦勢に後れを取らないよう、直接対決が出来るこの大会でしっかり存在感を示してほしいところです。

個人的には早くこのステージに法政がコンスタントに顔を出せるようになってほしい事を願いますが...

 

スケジュールと試合結果

第1節(4月28日)

4月28日(日) 流通経済 19-50〇 帝京
大東文化 29-33〇 東海

開幕節となった2試合。

注目のルーキーFL山添圭祐選手(長崎北陽台)と二村莞司選手(京都成章)がスタメン出場した帝京が、流通経済を後半突き放し初勝利をあげました。

昨季選手権天理との準決勝で試合開始早々に脳震盪で負傷退場したSO北村将大選手(3年・御所実)も1T5Gを決めるなど元気な姿を披露し、CTB尾崎泰雅選手、WTB木村朋也選手、FB奥村翔選手(共に3年)ら”伏見工トリオ”もそれぞれトライを奪うなど、下級生時代から試合に出場してきた貫録を見せつける活躍。

CTB岡村晃司選手(3年・御所実)含め奈良、京都の名門校出身の3年生が今季の帝京バックス陣の核となりそうです。

 

そしてもう1試合は昨季リーグ戦の覇権を争った東海対大東文化。

昨季リーグ最終戦以来の再戦となった試合は、前半リードを許した東海が後半3トライを畳みかける猛攻で逆転勝ち。

リーグ戦王者の意地を見せつけました。

大東大は平田主将、ファカタヴァ兄弟ら主力がこぞって卒業し、今季はフォワード陣の再構築が求められます。

”大学界ナンバーワン”と言われた強力スクラムを今年も維持できるのか⁉

No.8佐々木剛主将(八戸西)を中心とした新生モスグリーン軍団にも注目しましょう。

詳しくはこちらもどうぞ👇

【スポーツ大東】第8回関東大学春季大会 対東海大学

 

第2節(5月12日)

5月12日(日) 帝京 〇60-7 大東文化
東海 〇40-36 早稲田
流通経済 〇38-12 慶應義塾

帝京大 〇60-7 大東大】

王座奪還を宿命づけられた帝京が春から全開。

気力十分のフォワード陣が開始早々からガツガツ前に出て、タレント豊富なバックス陣へ有効なパスを供給し続けトライを量産。

前後半あわせて10本のトライを重ね、昨季リーグ戦2位の強豪大東大を粉砕しました。

帝京はこの試合、本来CTBの李承信選手をWTBで起用し2トライを奪う活躍を見せると、後半22分からは大阪桐蔭の花園優勝メンバーSO高本幹也選手も出場させるなど、新戦力の底上げにも余念なし。

フォワードでは肩の手術から復帰したFL山口莉輝選手(3年・長崎北陽台)が2トライ。

さらに高校時代から逸材と言われながら、流選手(日本代表主将、サントリー主将)、小畑選手(神戸製鋼)の陰に隠れていた末拓実選手(4年・長崎北陽台)も最終学年となり、持ち味のゲームメイクに加え、自ら仕掛けられるスクラムハーフとして躍動する姿が見られます。

昨年からチームを引っ張るSO北村選手、CTB尾崎選手、WTB木村選手ら3年生バックス陣も健在とあって、正直、、、

”今年も強いな”

という印象です。

 

一方の大東大は個の力で突破を図るシーンは随所に見せるものの、その後孤立しターンオーバーに合う場面が目立ち、まだまだチームとしての連携部分に課題が残ります。

昨季のメンバーが抜け経験値という部分でもまだ発展途上。

しかし、SH松田武蔵選手、SO青木拓己選手のルーキーHB団など楽しみな要素は満載。

今後のノビシロに期待したいところです。

 

東海大 〇40-36 早稲田大】

早稲田にとっては勝てる試合を落としたといったところでしょう。

試合序盤からシーソーゲームとなった試合でしたが、SO岸岡選手、CTB中野選手、WTB梅津選手ら黄金世代が出場したバックス陣は明らかに優勢。

フォワード陣もスクラムこそ東海に圧倒されるも、密集サイドでのディフェンスなどで奮闘。

それだけに後半14分に奪われた東海No.8吉田選手に奪われたトライが痛かったですね。

自陣ゴール前でペナルティを与えると、早稲田はスクラム選択と決め込んだか誰もボールの位置を確認せず棒立ち。

その一瞬のスキを吉田選手に突かれ、がら空きのゴール真下へトライ献上。

残念ながら集中力の欠如という以外ない取られ方です。

チームディフェンスをベースとしたチームとしては、こういう時間帯があってはとても勝てるチームにはなれません。

チーム内の競争が激しい明治、帝京ではまずこういうシーンは見られないでしょう。

春の時期とは言え、”勝利にこだわる”、

そのために”チームを代表して試合に出場している

という基本的な部分から再度見つめなおしてほしいです。

 

東海にとっては執念でもぎ取った勝利。

経験値の少ないメンバーが多く出場しているとあって、この勝利は大きな自信を与える内容となったのではないでしょうか。

次戦帝京との一戦が非常に楽しみです。

 

第3節(5月19日)

5月19日(日) 慶應義塾 20-42〇 帝京
早稲田 〇51-24 流通経済

帝京にとっては早くも春季大会3戦目。

序盤慶應に連続トライを奪われながら、あわてずじっくり体を当て続けた帝京が徐々に試合を制圧。

終わってみれば22点差の大差をつけて初の対抗戦勢相手に勝利を収めました。

帝京はこの試合でもFB奥村選手(3年・伏見工)が2トライ、ルーキーFL山添選手(1年・長崎北陽台)が1トライと活躍。

着々と主力と新戦力の融合が図られています。

試合の入りの部分で課題は残りましたが、毎年苦戦を強いられる難敵慶應を退けた事は大きな収穫と言えます。

 

そして早稲田は前節東海相手に苦しんだフォワード戦で優位に立ち流経大に快勝。

課題のスクラムでも相手を押し込む場面が見られ、ラインアウト含めセットプレーが安定した時の破壊力を見せつけた格好です。

どの相手に対してもこの試合運びが出来れば間違いなく今年の早稲田は日本一を狙えるチームになるはず。

次節の宿敵慶應との一戦が楽しみです。

 

第4節(5月26日)

5月26日(日) 早稲田 〇36-12 慶應義塾
帝京 26-31〇 東海

早稲田 〇36-12 慶應義塾】

長野スタジアムで行われた春の早慶戦。

試合開始早々から早稲田が怒涛のラッシュ。

3本連続トライであっという間に19-0。

その後試合は膠着するものの、後半もコンスタントに加点した早稲田が快勝。

前節の流経大戦に続き連勝を飾りました。

SO岸岡選手(4年・東海大仰星)、CTB中野選手(4年・東筑)、CTB長田選手、FB河瀬選手(共に3年・東海大仰星)ら、昨年から主力を張るメンバーが名を連ねる早稲田に対し、CTB栗原主将(4年・桐蔭学園)が不在の慶應。

ゲームメーク、プレーの精度、連携面でも早稲田に分があるのは明らか。

ここにSH齋藤主将が加われば、全てのポジションにスター級が並ぶ”早稲田史上最強”と言われるバックス陣が形成されます。

この破壊力は大学界随一。

腰痛で離脱中のキャプテンの復帰が待たれます。

しかし、やはりスクラムは明らかに慶應が優勢でしたね。

流経大戦では奮闘を見せましたが、やはり東海、慶應には押し込まれる場面が目立ち、昨年の課題は依然として課題のまま。

今年から本来の3番から1番へ挑戦中のPR久保優選手(3年・筑紫)、フィールドプレーの光るHO森島大智選手(4年・早稲田実)らフロントロー陣はまだまだ発展途上。

今後の奮起に期待したいところです。

 

【帝京 26-31〇 東海

2015年、2016年の大学選手権の決勝、2017年の準決勝。

そして過去7回の春季大会と、幾度となく挑戦しては跳ね返されてきた”赤い壁”を東海がついに打ち破りました。

前半は完全に帝京ペース。

先制トライをあげながら、前半22分にトライを奪われるとそこからミスにつけ込まれる形で次々に帝京に自陣を明け渡し3連続トライ。(7-26)

正直このままワンサイドゲームか、という雰囲気すら漂いました。

しかし、前半終了間際に1本返すと反撃は後半25分過ぎから。

66分にフォワードの縦突進でゴール真下へトライを奪うと、77分には敵陣深くのラインアウトからフォワードで押し込み2点差。

そして圧巻は後半ロスタイム。

敵陣22m付近でラインアウトを得ると、そこからドライビングモールで約20mを押し込み大逆転のトライ。

昨年同じ春季大会で7-69と屈辱の大敗を喫した相手を見事粉粉砕。

強靭なフィジカル、そしてドライビングモールという強みを前面に出し、戦い方が明確になった東海はやはり強い。

これで東海は前節早稲田戦に続く後半ロスタイムの逆転劇で見事3連勝。

リーグ戦のライバル大東大、対抗戦王者の帝京早稲田を撃破しての全勝キープは大きな価値があります。

リーグ戦低迷の前評判を覆す連勝劇。

”世代屈指のリーダー”眞野泰地選手率いる今年のチームから目が離せません。

 

一方の帝京は後半20分のメンバー交代直後から歯車が狂いだした印象です。

勢いづく東海になす術なく押し込まれる姿からは、昨年まで大学生相手に負けなしを続けてきた”絶対王者”の片鱗はなし。

勝つ文化を再び根付かせることがいかに難しい所業かを改めて実感する試合内容でした。

最終節の相手は対抗戦のライバル早稲田。

結果は如何に。

 

第5節(6月2日)

6月2日(日) 大東文化 24-47〇 早稲田

SH齋藤主将、FL幸重副将、そしてゲームメーカーSO岸岡選手を欠く中で、昨季リーグ戦2位の大東大相手に快勝。

いよいよ早稲田が底力のあるチームになってきました。

この日ゲームキャプテンを務めたFL柴田選手(4年・桐蔭学園)、WTB加藤選手(4年・函館ラ・サール)ら4年生がしっかりチームをまとめ、3試合連続スタメンのSH河村選手(2年・常翔学園)は主将不在を感じさせないボール捌きを披露、さらにSOとしては初めてアカクロに袖を通したSO中西選手(2年・早稲田実)はタレント揃いのバックス陣を巧みなパスワークで牽引。

そして、CTB中野選手、長田選手、WTB河瀬選手、NO.8丸尾選手、PR小林選手ら昨年から主力を張るメンバーがしっかりトライを記録し、近年なかなか勝利をあげられなかった。

リーダー不在でもゲームプランがぶれず、出場した選手が勝利に対して貪欲にそれぞれの役割を全うする。

これが強いチームのあるべき姿であり、この日のゲーム内容はようやく早稲田がそのレベルに達するチームになってきたという印象です。

次週は大学王者明治との招待試合、そして春季大会最終節は帝京

現在置を図るにはこの上ない相手ですね。

 

第6節(6月9日)

6月9日(日) 慶應義塾 〇43-12 大東文化
流通経済 △19-19 東海

ここまで3連敗と苦しんでいたチーム同士の激突は、CTB栗原主将が戦列に復帰した慶應義塾が大東大を攻守で圧倒する形で勝利。

栗原体制4戦目にしてようやく初勝利を挙げました。

この試合では、花園不出場ながら高校日本代表に選出された注目のルーキーSO中楠一期(国学院久我山)が初先発。

小気味のいいパスワークと自らもトライを挙げる活躍でバックス陣を牽引し、古田京前主将の後継者争いへ名乗りをあげました。

既に春季大会で試合に出場している帝京の高本幹也選手(大阪桐蔭)、同日行われた春早明で10番デビューを果たした早稲田の吉村紘選手(東福岡)ら、今年はスタンドオフのルーキーが豊作です。

秋に向けてどのようにチームへフィットしていくのか、こちらも注目です。

 

そして東海大対流経大のリーグ戦ライバル対決は19-19のドローに終わりました。

しかし、流経大は本当に不思議なチームですね。

帝京、早稲田には完敗を喫しながら、その2校に勝利を挙げた東海大とは互角の勝負を繰り広げる。

リーグ戦でも、下位チーム相手にいまいち調子の上がらない試合をしたかと思えば、東海、大東大を相手にした途端に完全に別のチームのように生まれ変わる姿を何度も見てきました。

この日も大学屈指の破壊力を誇る東海フォワード相手に序盤から気迫のこもったディフェンスで応戦。

後半34分までリードを奪うなど勝利目前まで東海を追いつめました。

逆に言うと相手によってムラが出てしまう事が流経大の抱える課題と言えますが、この試合の結果如何では東海大、大東大との”リーグ戦BIG3”の力関係が崩れる事も危惧していたため、この日の奮闘ぶりはリーグ戦のレベルを維持する上で非常に意義があったと感じます。

そして東海はこの日も試合終盤まで追い詰められながら、ただでは負けない姿を披露しましたね。

これで4試合全て5点差以内で負けなし。

眞野主将はここまでまだ試合出場はないものの、粘り強いチームになってきています。

帝京対早稲田の結果次第ですが、最終節慶應戦に勝利すれば初の春季大会王者も見えてきました。

 

第7節(6月16日)

6月16日(日) 帝京 ○61-24 早稲田
東海 ○29-17 慶應義塾
大東文化 △28-28△ 流通経済

 

 

 

最終順位表

優勝:帝京大学 4勝1敗

2位:東海大学   4勝1分

3位:早稲田大学  3勝2敗

4位:流通経済大学 1勝2敗2分

5位:慶應義塾大学 1勝4敗

6位:大東文化大学 4敗1分

 

最終節で早稲田を圧倒した帝京が、勝ち点で並んだ東海大を得失点差で振り切り、2年ぶりの春季大会優勝を飾りました。

前年度大学選手権覇者の明治が不在とは言え、覇権奪還に向けていいスタートを切ったと言えるでしょう。

特にバックス陣はSO北村将大選手(3年・御所実)、WTB木村朋也(3年・伏見工)ら昨年から主力を務めたメンバーが今シーズンも健在。

さらに、FL山添選手(長崎北陽台)、CTB李承信選手(大阪朝鮮)、SO高本選手(大阪桐蔭)ら期待の新戦力がAチームでの経験を積むなど、先を見据えたチーム作りが着々と進んでいます。

大幅にメンバーが入れ替わったフォワード陣が経験値を積んでいけば、十分優勝を狙えるチームになってくるでしょう。

 

早稲田は帝京にこそ完敗を喫したものの、慶應、大東大、流経大と数年前まで春の時期には力の差を見せつけられてきたチームに連勝。

SH齋藤直人主将始め主力が不在となる試合が多かった中、この結果を残せた事は底力がついてきた何よりの証です。

CTB平井亮佑選手(2年・修猷館)、CTB高木樹選手(3年・早稲田摂陵)、WTB安部勇佑選手(3年・国学院久我山)ら、これまで主力の陰に隠れがちだったメンバーが公式戦という舞台で経験を積めたことも大きく、主力とリザーブメンバーの力の差が埋まってくれば、さらに1段上のチームに変貌を遂げそうです。

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