”ワールドカップを巡る旅”。
九州ツアーの最終地は、初訪問となる熊本です。
2016年4月に発生した大地震の爪痕が残る中、W杯開催を実現させた熊本県。
既に開催日程は終了しましたが、復興の街を訪れた人間の一人として、現状を心に刻まなければいけません。
そこでここでは、熊本会場へのアクセス状況や、観戦前に訪れた熊本城や周辺状況など、現地での見聞をありのままにレポートしたいと思います。
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熊本会場基本情報
まず初めに熊本会場の基本情報を簡単にご紹介します。
<正式名称>『熊本県民総合運動公園陸上競技場』
<ネーミングライツ>えがお健康スタジアム
<愛称>KKWING(ケーケーウィング)
<収容人数>32,000人
通常はJリーグのロアッソ熊本が本拠地として使用。
2016年4月の熊本地震被災直後は、全国から集まる支援物資の集積所としても利用された。
照明設備や客席などスタジアム本体も被災したが、修復を経てその1年後の2017年4月には全面使用が可能に。
そして、2017年6月には熊本県で初めて行われた日本代表のテストマッチの舞台となり、ルーマニア代表との試合には1万8000人を超えるファンが詰め掛けた。
ラグビーW杯 熊本開催日程
10月 6日(日) 16:45 フランス 対 トンガ
10月13日(日) 17:15 ウェールズ 対 ウルグアイ
熊本県民総合運動公園陸上競技場へのアクセス方法
熊本県民総合運動公園陸上競技場(以下:えがおスタ)の最寄駅はJR豊肥本線の『光の森駅 』です。
ただ、スタジアムへ来られる多くの方は、熊本のメインゲートとなる熊本駅、そして熊本空港が拠点となるかと思います。
それぞれからのアクセス方法はロアッソ熊本のHPがとても参考になります。
(情報元:ロアッソ熊本公式HP)
上の図にもあるように、通常『熊本駅』からは路線バスを利用し、スタジアム目の前の『パークドーム熊本前』で下車する行き方が最もシンプルで楽ですが、今回のワールドカップでは交通規制のため試合のある日(10月6日と13日)はこのルートを利用する事が出来ませんでした。
ただその代わりに、最寄りの『光の森駅』からスタジアム向けに無料のシャトルバスが運行されていました。
私は今回それを利用したため、この記事では、
のルートをご紹介します。
博多駅から熊本駅へ
前日は大分での試合を観戦後、バスで博多入り。
翌早朝の新幹線『つばめ』で熊本へ向かいました。
九州新幹線には今回初めて乗りましたが、
現在『ミッキーマウススクリーンデビュー90周年記念』のイベント中という事で、特別にコーティングされた”ミッキーつばめ”に乗車。
中の装飾もミッキー一色。
このイベントを知らなかった私たちにとって、これは思わぬサプライズ。
お陰で早朝移動に眠たい目をこすっていた娘の笑顔を見る事が出来ました。
つばめに乗り込み博多駅を出発すると、
わずか50分ほどで熊本駅へ到着。
所用時間は大阪-名古屋間とほぼ同じ。
熊本って実は身近な距離にあったんですね。
ホームも改札内も、まだ早朝のためラグビージャージを着た人は見当たりません。
それでも駅の中はしっかりワールドカップモードでお出迎え。
これは東京、愛知、静岡、大分、福岡、そして熊本、どこも共通しています。
一部の都市での開催となる五輪と違い、日本全土で開催されるラグビーワールドカップの良さがここにありますね。
熊本駅からシャトルバス乗り場へ
熊本初訪問という事で、到着後はしばし熊本観光。
熊本城、ファンゾーンを昼過ぎまで楽しみ、いよいよ観戦モードです。
熊本観光をそのまま続ける家族と離れ、一人熊本駅へ戻ると在来線のJR豊肥本線へ。
駅員さんもみな桜のジャージ。
いい感じです。
ホームには『肥後大津行き』の電車が既に到着していました。
乗り込むと、電車内はフランス代表のジャージに身を包んだファンがほとんど。
朝からビールを飲んでいたであろう彼らは、既にテンションMAX。
「アレ!レ・ブルー!!」
「アレ!レ・ブルー!!」
となりの車両からは彼らの大合唱が響いてきます。。
一般の方は乗り合わせていなければいいな、、、と思いながら、こそっと「アレ!」の意味を調べる。
※『レ・ブルー(Les Bleus)』:フランス代表の愛称
25分ほど電車に揺られると、スタジアムの最寄り駅である『光の森』駅へ到着。
この駅も豊田スタジアムの『豊田市駅』や、エコパスタジアムの『愛野駅』同様、大人数を一度に捌けるほどのキャパではないため、ホームはなかなかの混雑ぶり。
それでも、
この垂れ幕を眺めると、ついほっこりしてしまいます。
行列と共に改札を出ると行列に導かれるように北口方面へ。
出口へ降りる階段から外を眺めると、
先に電車を降りた先頭組が既に歩き始めていました。
桜のジャージもチラホラ。
駅を出て直進すると一つ目の交差点角にコンビニを発見。
試合観戦時の食料調達が必要だった私も店の中へ。
しかし、やはり店内は大混雑で、購入までの所要時間は20分ほど。
コンビニで20分並ぶ経験はなかなかできません。
この時、コンビニがバス乗り場手前にもある事を知っていれば。。。
やはり事前リサーチはとても重要ですね。
ローソンを出ると20分のロスで、同じ電車組の人は殆どいません。
焦りながらも気を取り直して、右へ直進。
しばらくするとT字路にぶつかるので、信号を渡り切ってから左へ。
後はひたすら真っすぐ。
すると右手にコンビニを発見。
やはりここは空いてます。
手荷物を持って歩くことを考えると、断然ここでの購入がおススメ。
そしてコンビニを抜けると、
バス乗り場へ到着。
ここは本来、『九州産交バス光の森営業所』の敷地なんだそうです。
徒歩時間だけを考えれば駅から約10分ほどでしょうか。
乗り場には前日に行った大分会場と同じく、様々なバス会社のバスが集結。
意気揚々と乗り込み、いざスタジアムへ。
バス下り場からスタジアムへ
道中は渋滞もなく、
15分ほどでスタジアムの下り場へ到着。
スタジアムまではここからさらに10分ほどです。
途中、ゲートの場所によって進路が分かれますが、後で修正はきくので間違えて進んでも大丈夫。
しばらく歩くと、
人で賑わう広場の向こうにスタジアムが見えてきました。
私のシート(カテゴリーC)はゲート4。
どうやら一番遠いゲートのようです。
スタジアムの外周を回り一番奥へ。
到着。
キックオフ40分前。
ゲートの混雑も殆どありません。
持ち物検査を通過し、チケット確認を経てようやく中へ。
スタジアムはと言うと、
大自然に中に溶け込む壮観ないで立ち。
スタンドは『アレー!レブルー!』の大合唱。
その場所に響き渡るフランス国家
『ラ・マルセイエーズ』
そして、トンガ代表の戦いの舞
『シピタウ』
これこそずっと待ち望んでいた光景です。
フランス有利と言われていた試合も、既に2敗で後がないトンガが、好調フランスを最後の最後まで追いつめる熱い内容
※最終スコアは23-21でフランスが勝利
最高の時間を過ごすことができました。
スタジアムから熊本空港へ
帰りは乗り遅れが許されない飛行機移動のため、行列を避けるべく試合終了直前にはスタジアムを後に。
外に出ると同じ考えの方々もチラホラ。
空港行きのバス乗り場はゲートを出て5分ほど歩いた場所にありました。
まだ試合が行われている時間のバス停は行列がなく、待ち時間はなし。
そして15分ほど乗ると、
空港へ到着。
渋滞もなく実にスムーズなものです。
今回、JR光の森駅行きだけでなく、熊本空港行きのシャトルバス(有料)も運行されていたことは、とても便利で有難く感じました。
空港内のフードコートで軽く夕食を食べていると、スタジアム帰りの方々が続々と到着。
その満足そうな笑顔を見る限り、同じ思いだった人はきっと多かったはずです。
感じたこと
スムーズだった観客輸送
熊本会場としては初開催となったこの日。
時間ギリギリまで熊本市内を観光してしまった私は、シャトルバス乗り場への道中に、大分会場で同じく初の開催日に浮き彫りになった観客輸送問題が脳裏をよぎった。
(※2試合目の開催日にはそれが劇的に改善されていたことは、こちらの記事でレポートさせて頂いたとおりだ。)
「もし乗り場が行列になっていたら、キックオフに間に合わないかも....」
内心心臓はバクバクだ。
しかし、いざ蓋を開けてみると、
乗り場には覚悟していた行列が見当たらない。
先頭に着いても待っている人は殆どいない。
一度も立ち止まることなく車内へ入ると、
好き放題座れる状態。
キックオフ1時間半前で、これはどうしたことか....
若干の不安を感じ、近くにいたスタッフに聞いてみると、
「行列のピークは30分ほど前に過ぎた」
のだと言う。
既に殆どの人をスタジアムへ輸送済み。
これは凄いことだ。
確かに、熊本市内のファンゾーンでも、早めのスタジアム移動を喚起する放送や、ボランティアの方の呼びかけを何度も耳にした。
それも、
『光の森発のシャトルバス利用者の出発目安は○○時頃』、
『ファンゾーン発のライナーバス利用者の出発目安は○○時頃』、
『熊本駅発のライナーバス利用者の出発目安は○○時頃』
と、それぞれのルートに対し、目安となる出発時間を丁寧にアナウンスしてくれていた。
その効果が表れてたということではないか。
実際、私と同じ時間帯にバス乗り場へ観客が大挙押し寄せていたら、私も含めキックオフに間に合わない人たちが続出していたに違いない。
熊本ではこの日が初開催日だったにも関わらず、事前に混雑や待機時間を想定し、スムーズな観客輸送を実現した運営は見事だった。
きっとこの日に至るまで幾度となく関係者によるトライアル アンド エラーが繰り返されてきたに違いない。
さらにそこに大分県との連携があったのだとしたら、、、
こんなに素敵なことはない。
街を彩ったフランスサポーター
この日、熊本市街を歩いていると、多くのフランス人サポーターに出くわした。
熊本城で開催された『お城祭り』を楽しむ人たち。
飲食エリアでご当地グルメを堪能する人たち。
テント内で目が合った右端のイケメンフランス人は、
「サモア戦ナイスゲーム!」
「Go Japan!」
と笑顔で声をかけてくれた。
その他にも、
コンビニの駐車場で芸を披露する人や、
おちゃめな帽子をかぶる人たちまで。
共通しているのは誰もが日本の歴史と文化を尊重し、熊本滞在を心から楽しもうとする姿勢。
これが”多様性の国”フランス。
街中ですれ違う多くのフランス人に笑顔を向けられると、何故かこっちがおもてなしを受けている気分になった。
『復興の旗印』熊本城
”熊本城訪問”
これはお城が大好きな私たち夫婦の悲願の一つだった。
このツアーの一番の目的はワールドカップ観戦である事は言うまでもないが、今年1月に他会場に先立って熊本開催のチケットを入手したのはそんな背景もある。
ただ、もちろん熊本城が修復作業下にあることは知っていたので、その時は「せめて外から眺めるだけでも」という思いでいた。
そんなある日、家族で旅行のスケジューリングをしていると、こんなニュースを目にした。
何というタイミング。
熊本県が私たちを歓迎してくれていると感じた。
そして感謝の思いと共に、念願だった熊本城を訪問。
するとそこには、
観光客を受け入れる準備と、
立派に修復された天守閣(大天守)が存在していた。
心を奪われしばらく天守を眺めていると、道案内をしていた女性スタッフが、
「今日はどこからお越しになったんですか??」
と、気さくに話しかけてくれた。
嬉しくなり、来訪の背景と、復旧された天守閣の姿に感動した旨を伝えると、
「このワールドカップを目指して、みんなが一丸となって必死に頑張ってきた。
無事にこの日を迎えられ、こんなに多くの方に来て頂いて感無量です。」
という言葉が返ってきた。
何気ない会話をするつもりで心の準備をしていなかった私は、その言葉に思わず感極まってしまった。
ラグビーのため、ワールドカップのためにそこまで...。
被災地そして開催地に生きる方々の生の声を聞いた気がした。
聞けばその方、元々は長崎県人だが、結婚して以降に熊本市に住み始めたのだという。
生粋の熊本県民ではない方から発せられた熊本の復興と、ワールドカップに懸ける思い。
それが行政側の人間ではなく、一市民の言葉だからこそ重みが違う。
歓喜と熱狂が続くワールドカップ日本大会。
その裏には陰で支えている多くの人の努力と想いがある。
そのことを忘れてはいけない。
熊本での開催試合は10月13日のウェールズvsウルグアイ戦をもって、無事幕を閉じた。
だけど、この街の復興への挑戦はまだ終わらない。
復興の旗印となっている荘厳な天守閣の裏では、被災したまま手つかずの箇所が多く残る。
その姿を目に焼き付けること。
その状況を一人でも多くの人に伝えること。
そして出来るアクションを考え実践していくこと。
この日この場所へ自分を導いてくれた『熊本』と『ワールドカップ』への恩返しはそこからだ。