先週の早明戦を最後に関東、関西主要リーグの全日程が終了し大学選手権出場チームが出揃いました。
これよりいよいよ激戦の火ぶたが切って落とされます。
今年は
”帝京10連覇なるか⁉”
”早稲田創部100周年の復活優勝は⁉”
”昨年1点差に泣いた明治のリベンジVは⁉”
”天理悲願の初優勝なるか⁉”
などなど、各校の戦力が拮抗していることで例年以上に見どころが満載。
12月16日(日)からスタートする3回戦から目の離せない戦いが続きます。
そこでここでは厳しいリーグ戦を勝ち抜き、出場権を得た各リーグのチームの顔ぶれと今大会の展望を3回にわたって見ていきたいと思います。
まずは今年の選手権の概要と最後まで激戦となった関東対抗戦Aグループから行ってみましょう。
第55回全国大学ラグビー選手権大会 概要
大会日程
開催日 | 時間 | 試合会場 | ||
1回戦 | 2018/11/24(土) | 11:30 | ミクニワールドスタジアム北九州 | 福岡 |
2回戦 | 2018/12/01(土) | 11:30 | パロマ瑞穂ラグビー場 | 愛知 |
3回戦 | 2018/12/16(日) | 12:05 | 熊谷ラグビー場
Aグラウンド |
埼玉 |
14:00 | ||||
12:05 | キンチョウスタジアム | 大阪 | ||
14:05 | ||||
準々決勝 | 2018/12/22(土) | 12:05 | 秩父宮ラグビー場 | 東京 |
14:20 | ||||
12:05 | キンチョウスタジアム | 大阪 | ||
14:05 | ||||
準決勝 | 2019/1/2(水) | 12:20 | 秩父宮ラグビー場 | 東京 |
14:10 | ||||
決勝 | 2018/1/12(土) | 14:15 | 秩父宮ラグビー場 | 東京 |
12月1日の2回戦で福岡工大が朝日大を下し(○55-40)、3回戦進出チームが出揃いました。
12月16日(日)の3回戦からは関東・関西主要リーグの上位陣も登場し、いよいよ大学頂点へ向けた熱戦がスタートします。
出場校一覧
♦関東大学対抗戦Aグループ | |
帝京大学 | 20大会連続26回目 |
早稲田大学 | 35大会連続52回目 |
慶應義塾大学 | 21大会連続36回目 |
明治大学 | 10大会連続47回目 |
筑波大学 | 3大会ぶり21回目 |
♦関東大学リーグ戦1部 | |
東海大学 | 14大会連続16回目 |
大東文化大学 | 6大会連続26回目 |
流通経済大学 | 11大会連続19回目 |
♦関西大学Aリーグ | |
天理大学 | 5大会連続27回目 |
立命館大学 | 2大会連続19回目 |
京都産業大学 | 6大会連続32回目 |
♦東北・北海道代表 | |
北海道大学 | 初出場 |
♦東海北陸・中国四国代表 | |
朝日大学 | 7大会連続7回目 |
♦九州学生リーグI部 | |
福岡工業大学 | 2大会ぶり26回目 |
昨年帝京と明治の関東対抗戦勢が決勝を戦ったため、決勝進出チーム所属リーグへ与えられる2枠が両方とも関東対抗戦へ。
結果、今年の出場枠は以下の通りとなりました。
”対抗戦 5:リーグ戦 3:関西リーグ 3”
これにより対抗戦で3勝4敗と苦しんだ筑波が滑り込みで出場権を獲得する一方で、法政、関西学院、同志社などリーグ戦を4勝3敗と勝ち越しながら、名門が涙を飲むといったケースも生まれ、対抗戦とそれ以外で明暗がくっきりと分かれる形となっています。
そして今年は北の雄、北海道大学が創部94年目にして初めて大学選手権へ出場を果たしたことも、話題となりましたね!
出場チームの顔ぶれ
それではまずは関東対抗戦グループから名乗りを上げたチームを見ていきましょう。
関東大学対抗戦Aグループ
帝京大学
言わずと知れた大学ラグビー界の”絶対王者”。
いつかは止まると思われていた選手権での連覇の数も気が付けば”9”。
いよいよ今年は大台”2桁”への挑戦というところまで来ました。
卒業と入学を繰り返し毎年メンバーが入れ替わる学生スポーツにおいて、この数字の持つ偉業度はいまさら言うまでもありませんが、勝ち続けても”失わない謙虚さ”、”勝利に対する渇望”、”変化を恐れないマインド”は今や帝京の文化であり、王者であり続ける要因。
今年も優勝へ一番近いポジションにいる事は間違いありません。
しかし、毎年学生相手にはシーズンを通して負け知らずだった王者が、今年は”春季大会”、”夏合宿”、”対抗戦”で明治によもやの3連敗。
夏合宿では近年”お得意さん”にしてきた早稲田にも敗れるなど、他校の強化も進み、その勢いに陰りが見え始めているのも事実。
ただ、FB竹山を中心としたBK陣はSO北村、CTB尾崎、WTB木村、宮上など若い逸材揃い。
主力が抜けても続々とタレントが育ってきているだけに、やはり偉業達成に不可欠な要素はLO秋山主将を始めとするフォワード陣の奮起でしょう。
特に対抗戦で明治に粉砕されたスクラムの修正は急務です。
対抗戦では早稲田と同率優勝ながら直接対決の勝敗により1位扱いとなった事で、組み合わせにも恵まれた帝京。
偉業へのターニングポイントは、強力FW擁するチーム(大東文化か天理と予想)との対戦が予想される準決勝の出来でしょう。
早稲田大学
”創部100周年”のメモリアルイヤーに対抗戦で8年ぶりの復活優勝を果たした早稲田。
相良新体制となった今年は春季大会で日体大に敗れるなどシーズン序盤こそ不安定な状態が続きましたが、夏合宿では”チームディフェンス”が機能し王者帝京に土を付けるなど、チームはシーズンが深まるにつれ劇的な進化を遂げてきています。
中でも、早慶戦、早明戦で見せた華麗なバックス展開は往年の代名詞”ヨコの早稲田”を体現するには十分。
抜群のゲームマネージメントを見せるSH齋藤、SO岸岡のHB団にCTB中野、桑山(淳)、WTB古賀、長田、FB河瀬で構成される布陣は”今季の大学界No.1”どころか、”早稲田史上最強”の声も聞かれ始めています。
弱点とされてきたフォワード陣も、早明戦で見せた密集サイドのディフェンス、スクラムでのダイレクトフッキングなど、劣勢が予想されるポイントは克服されつつあるため、残る課題はやはりラインアウト。
個人的には覇権奪回へのカギは、セットプレーの中心である”フッカー”だと見ています。
フィールドプレイに秀でる宮里、セットプレーの安定感が光る峨家。
いずれも今の早稲田に必要な武器を持つだけに、どちらをファーストチョイスとするかで選手権での戦い方が変わってきますし、メンバーへの意思表示にもなるでしょう。
早慶戦、早明戦の連勝で、”今最も勢いのあるチーム”そして”本気で優勝を狙えるチーム”に変貌した早稲田。
1999年度の慶應100周年Vのように復活優勝を成し遂げたその先には、”レジェンドチーム”の称号と”10年ぶりの荒ぶる”、そして復活を待ちわびた”ファンの歓喜”が待っている。
慶應義塾大学
今年の大本命だった明治には勝利を挙げる一方で帝京・早稲田には敗れるなど、今年も対戦相手によって相性の良し悪しがはっきりと表れた慶應。
しかし、SO古田主将、LO辻副将、WTB丹治、宮本ら、前年度の花園準優勝チームだった桐蔭学園を県予選で撃破した”慶應高黄金世代”を擁し、明治・帝京相手にもフォワードで真っ向勝負できる今年のチームが、頂点を狙うポテンシャルを有していることに疑いようはありません。
安定したセットプレーから、じっくりと時間をかけて順目、順目を突きディフェンスの綻びを突いてくる攻撃スタイルは、どんな強固なディフェンス網を持ってしても対戦校にとっては脅威。
実際、敗れた明治はその”土俵”に引き込まれてしまったがために、自分たちの強みを出すことが出来なかったと言えます。
最終学年を迎える”黄金世代”が見据えるのは当然1999年度以来の大学日本一。
ただ、そのためにはもう1スパイス、”ジョーカー”的な存在が必要な気がします。
そう、あのOB山田章仁選手(現パナソニック)のように勤勉さに”遊び心”をもたらせてくれるような存在。
その役を担えるのは、、、WTB/FB丹治選手をおいていないでしょう。
個で違いを生み出せるランニングスキルと大胆さと意外性を併せ持つセンス抜群のライン参加。
最近は負傷がちでWTBで途中出場した早慶戦では本調子には程遠い出来でしたが、選手権ではより自由度が高く、スペースが与えられるFBとしての先発復帰が待たれます。
実直に与えられた戦略と任務を遂行するタイガー軍団に、枠にはまらない意外性・大胆さという”遊び心”のエッセンスが加われば、さらに相手にとっては組しづらいチームへ進化を遂げるはず。
丹治の復活に大いに期待をしましょう!
明治大学
春、夏2度の帝京撃破で、一躍今シーズンの大本命に躍り出た明治。
各年代の代表クラスが揃い圧倒的破壊力を秘めた”重戦車”フォワードと、SH福田主将を中心に多士済々のバックス陣。
有しているタレントと層の厚さは間違いなく大学界随一。
そしてそこに田中澄憲監督が最新で的確なコーチングを導入し、くすぶっていた才能集団がついにチームとして開花しました。(もちろんその裏には吉田・丹羽体制時の素地があった事は間違いないだろうが。)
しかし、その取り戻したはずの”矜持”も、自分たちのミスから自滅する形で敗れた慶明戦あたりから、微妙なズレが生じ始めています。
帝京相手にはスクラムで圧倒すると共にチーム一体となった厳しいディフェンスで、王者から春・夏に続き3連勝を飾るも、早明戦ではディフェンス網の穴を突かれ、早稲田バックス陣にいいように走られる結果に。
慶應、早稲田どちらが相手でも、スクラムは完全に制圧しているにも関わらず、どこかチグハグでその優劣を得点につなげられていない印象です。
やはり紫紺復活のカギは”シンプルな戦略”にあるのではないでしょうか。
試合への入り方、グランドレベルでの声、一人一人の集中力を見ていると、帝京に臨んだ時のそれと慶明戦、早明戦では違うように感じられます。
もちろん帝京にピークを合わせてきたとも言えますが、どこか相手のペースに合わせてしまう”お人好しな”側面が見え隠れします。
一発勝負の選手権で精神的なムラは致命傷となりかねない。
だからこそ、”シンプルな戦略”が今の明治にはポイントとなってくる気がします。
スクラムは相手を崩すだけの戦略なのか、トライを取るまで拘るのか、それとも最後はバックスで仕留めるのか。
対戦相手としてみるとここが徹底されるほど恐いものはありません。
そのためには、チーム戦術のタクトを振るうスタンドオフの固定が必要だと感じます。
忽那選手と松尾選手。共に4年生。
1年時からお互い切磋琢磨するなどその才能に疑いの余地はなく、特徴は違えど相手に脅威を与える存在であることは間違いありません。
ただ、SOはチーム戦術の根幹をなす存在。
振るうタクトによって周りを固めるバックスだけでなく、フォワードも動き方が変わってきます。
どちらも最終学年として今年にかける想いの強さは痛いほど分かりますが、一発勝負のトーナメントでは戦略をいかにシンプルに落とし込むかが重要です。
選手権の明治はこれで行く!
これが明確になったとき、紫紺20年ぶりの戴冠が見えてくるはずです。
筑波大学
春季大会をBグループながら全勝で駆け抜け、夏合宿では東海を圧倒するなど今年のダークホースと目されていた筑波。
しかし対抗戦では帝早慶明の上位校にそれぞれ完敗し、終わってみれば3勝4敗の5位。
昨年主力だったメンバーが殆ど卒業し、チームの再構築を余儀なくされた今年は「近年疎かになっていた」という接点強化へ取組み、得意のフィジカルバトルへ挑む準備は整っていたはずでした。
が、4年生の人数が少なく春から下級生を巻き込んだチームを作る必要があった筑波に対し、秋に向けてベストメンバーをしっかり組んでくる上位校とでは、やはり経験値と選手層の部分で差が出てしまったと言えます。
個人的にはノビシロのある発展途上のチームだったからこそ、早慶明との対決はシーズンが深まった状態で見たかったと思いますが。。。
やはり開幕3連敗を喫し序盤で優勝の芽がなくなると、チームとしても個人としてもピーキングは困難になってきます。
厳しいシーズンを送りながら、ここまで体を張ってチームを鼓舞してきたHO大西主将には本当に頭の下がる思いです。
ただ、大学選手権は一発勝負のトーナメント。
ここからは何が起こるかわかりません。
そして何も失うものはありません。
SO松永選手やWTB仁熊選手など有望な若手も主力として成長し、今年若かったチームにとってはこの選手権での経験は来期以降の大きな糧となるはず。
5位からの下剋上へ。
初戦の大東文化にその全てをぶつけるのみです!
組み合わせ表と展望
やはり一番のポイントは早慶明が左のブロックに集中してしまったというところでしょうか。
準々決勝で”早慶戦”、準決勝で”早明戦”実現となれば秩父宮ラグビー場のチケット争奪戦は必至。
「年末年始はラグビー観戦!!」
と決め込んでいる方は今からチケットを抑えておくことをお勧めします。
準々決勝以降の秩父宮の指定席は既に完売してますが一般席はまだ間に合うはず。(私は既に手配済み。一般席ですが...)
それぞれ早稲田に敗れたことで3位、4位となった慶應と明治ですが、天理以外の関西勢との実力差は明らかで3回戦突破は確実。
そうなれば明治は東海、慶應は早稲田の準々決勝となります。
ここにきてフィジカルの強度が高まって来た東海は非常に難敵ですが、頂点を見据える明治としてはまずスクラムなどフォワード勝負で圧倒したいところ。
東海もモールを中心としたフォワード戦を挑んでくると見られるため、相手の強みの部分を上回ることが勝利への近道です。
その先には慶應、早稲田へのリベンジの場が待ち受ける中、ここで力尽きるわけにはいきません。
そして、慶應にとっても早稲田は格好のリベンジの相手。
早慶戦では接点部分で優位に立つ部分が多くみられるも、ミス続きで得点が奪えず、ペースを握れないまま80分が終わってしまった印象で、選手たちにとってもやられたという感覚はないでしょう。
それだけに今回はPGでもDGでも、とれるところでは着実に加点する事がポイントとなってきそうです。
今年の早稲田は得点力があるため、点差を離されないことが重要。
前回のようにPKからでもトライに拘りすぎず、SO古田主将の左足という抜群の精度を誇る”武器”を使った戦いをしていきたいところです。
一方の早稲田にとっては初戦で東海、明治といったフィジカルに強みを持つ相手との対戦を避けられたのは幸運です。
2016年の同志社、昨年の東海とトーナメントでの流れを掴む前に初戦で敗退するケースが続いてる早稲田にとっては、強豪ながら戦い方の計算できる慶應は与しやすい相手と言えます。
慶應を破れば、明治、そしてその先はおそらく帝京となる事でしょう。
既に4年連続で”正月越え”を逃し、同校ワーストを更新している早稲田。
100周年での正月越えはマスト、見据える先は頂点しかありませんね。
そして左のブロックでは1位扱いとなった帝京だけが”孤高の旅”状態。
準々決勝では上位校で一番力が劣るとみられる流経大が相手で番狂わせはほとんど期待できません。
準決勝進出は確実と言えるでしょう。
ただ問題はそこからです。
接戦を経験しないままベスト4に勝ち進んだ場合、相手として予想されるのは天理大または大東大。
どちらも強力なフォワードを擁し、高い強度のフィジカルバトルを強いられることになります。
他ブロックのライバルチームが緊張感のある激戦を経験する中、準決勝という大一番でいきなり直面するその強度にメンタルとフィジカルが追いつくのか。
例年、同様のポジションから勝ち抜いてきたのが絶対王者ですが、今年はこの組み合わせがどちらに転ぶか。
右側の”死のブロック”と共に今季の選手権の注目のポイントです。
次回は関東大学リーグ戦1部をお伝えします。
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