昨年創部90周年を迎えた日本大学。
リーグ戦で過去3度の優勝を誇り、全盛期には”ヘラクレス軍団”と恐れられた古豪も、2013年度を最後に大学選手権の出場はなく、ここ数年は入替戦の常連になるなど低迷が目立ちます。
しかし、昨年からその流れに変化が見られるようになりました。
開幕から、
流経大(●26-29)、東海(●28-48)、大東大(●13-52)、法政(●31-41)
と4連敗は喫したものの、大東大戦以外は上位勢と堂々と渡り合い、さらに下位チーム相手には危なげなく3連勝。
最終順位は3勝4敗の5位と惜しくも大学選手権出場は叶いませんでしたが、戦績から見てもその変化が窺えます。
近年上位と下位の順位がほぼ固定されつつあるリーグ戦に新風を吹き込むことが出来るのか。
復活を期す2019年度の新体制と新入部員を紹介します。
<新入生情報2021↓>
日本大学 2019年度新体制
監督 | 中野克己 | 87年卒 | |
主将 | 坂本駿介 | 三本木農 | PR |
副将 | 金丸健太 | 天理 | CTB |
総務 | 野田晃平 | 長崎南山 | SO |
2017年度に就任した中野監督にとって今年は3年目の集大成。
日大は創部90周年での復活に向けて、”スポーツ日大アスレティックパーク稲城”(※注1)を創設するなど、設備・環境面そして食事面でも大学トップレベルの充実度を誇り、古豪復活へ向けた変革に大学を挙げて取り組んでいます。
(※注1)東京ドーム2.7個分、約126,000m²の敷地に、合宿所、人工芝の専用ラグビー場、クロスカントリーコース、そして合宿所内には国内最高レベルのトレーニングルームやケアルームも完備された施設。(所在地:東京都稲城市坂浜1382)
そしてその”想い”に呼応するかのように近年有力選手が続々と入部し、今年の1年生を加えるとその人数は総勢130名を超えます。
そして、その大所帯を率いる主将に選ばれたのはPR坂本駿介選手。
1年生時から主にフォワード第3列としてリーグ戦全試合に出場しながら、コーチの勧めもあり2年生から急きょ第1列のプロップへ転向。
第1列はスクラムの最前線を担うため本格的な身体作りが求められますが、驚かされるのは体重が90kgから110kgへ増加したことはもちろん、50m走の記録が脅威の6秒3を維持していることです。(ちなみに私の現役時代は70kgで6秒7です...)
最先端のトレーニング環境だけでなく、本人のたゆまぬ努力と鍛錬の跡が見て取れます。
さらに転向から1年足らずの2年生の冬には、そのスクラムの強さとフィールドプレーを買われ、U20日本代表候補にも選ばれるなど、持ち前のラグビーセンスのみならず、妥協なき姿勢、最前線で体を張れる選手としても厚い信頼を置ける男。
監督、コーチら指導陣からも絶対の信頼を集める新主将がどのようにチームを牽引するのか。
”ヘラクレス軍団”の復活はこの選手の双肩にかかっています。
日本大学 2019年度新入部員
それでは次に同部HP上で発表された今年の新入部員を見ていきましょう。
PO | 氏名 | 出身校 | 身長 | 体重 |
---|---|---|---|---|
PR | 山﨑重輝 | 昌平 | 172 | 109 |
PR | 関川雄平 | 天理 | 175 | 94 |
PR | 長谷地有希斗 | 保善 | 163 | 113 |
PR | 執行朝陽 | 佐賀工 | 174 | 105 |
PR | 南川紘基 | 東福岡 | 175 | 98 |
PR | 東 宏信 | 大産大付 | 171 | 94 |
PR | 岩上 龍 | 目黒学院 | 176 | 102 |
PR | 岡 大輝 | 京都成章 | 178 | 100 |
PR | 軽部響太郎 | 筑前 | 183 | 97 |
PR | 松岡翔吾 | 崇徳 | 183 | 105 |
HO | 明光棟吾 | 桐生第一 | 163 | 94 |
HO | 林 琉輝 | 日大高 | 169 | 85 |
HO | 金 樹一 | 大阪朝鮮 | 173 | 96 |
LO | 川中子宙夢 | 国学院栃木 | 172 | 84 |
LO | 檜谷秋人 | 保善 | 177 | 77 |
LO | 今村太一 | 大東第一 | 181 | 93 |
LO | 小松﨑 陸 | 東京 | 180 | 93 |
LO | 平坂桃一 | 日大高 | 181 | 92 |
FL | 髙橋 慧 | 東京 | 177 | 82 |
FL | 藤野智也 | 国学院栃木 | 168 | 73 |
FL | 峰 純平 | 長崎北 | 170 | 80 |
FL | 藤木政仁 | 九州学院 | 172 | 77 |
FL | 山本敏也 | 桐蔭学園 | 174 | 85 |
FL | 高 祥文 | 大阪朝鮮 | 175 | 83 |
FL | 鷲谷太希 | 天理 | 188 | 87 |
No.8 | 原田竜弥 | 明和県央 | 174 | 87 |
No.8 | 小泉和穂 | 国学院栃木 | 172 | 90 |
SH | 山田悠登 | 静岡聖光 | 175 | 72 |
SH | 石川留依 | 美里 | 166 | 87 |
SH | 森口公暉 | 日大藤沢 | 170 | 68 |
SO | 河原申弥 | 鶴来 | 165 | 60 |
SO | 中司大也 | 日大高 | 171 | 65 |
SO | 廣木一世 | 興国 | 172 | 75 |
SO | 普久原 琉 | コザ | 177 | 82 |
CTB | 石田稜太郎 | 若狭 | 175 | 83 |
CTB | 太田寿一郎 | 神戸村野工 | 177 | 94 |
CTB | 広瀬龍二 | 日川 | 171 | 87 |
CTB | 尾﨑弘法 | 長崎北 | 174 | 75 |
CTB | 饒平名悠斗 | コザ | 176 | 82 |
WTB | 上原大智 | 目黒学院 | 164 | 72 |
WTB | 炭竈克斗 | 天理 | 165 | 71 |
WTB | 伴 真行 | 常翔学園 | 167 | 76 |
WTB | 篠澤太陽 | 昌平 | 172 | 79 |
WTB | 水間夢翔 | 佐賀工 | 170 | 92 |
WTB | 佐藤涼星 | 京都成章 | 172 | 68 |
WTB | 星原伊吹 | 鹿児島玉龍 | 167 | 64 |
LO | イオセファツ・モレコ | レウルモエガフォ | 185 | 105 |
CTB | ナサニエル・tゥポウ | マリストブラザーズ | 180 | 100 |
(情報元:日本大学ラグビー部HP)
※青字:高校日本代表候補
48名の若人が新たに”ヘラクレス軍団”の一員となりました。
48名は東海大の45名を抜いて主要大学では最多の数字。
早稲田、慶應、東海、流通経済など系列校からの進学組が多い大学なら話は分かりますが、ラグビーで全国区の系列校を持たない大学としてこの数字は圧倒的です。
大学を挙げたスカウティング活動の充実ぶりを示すには十分な数字です。
沖縄の誇る黄金トリオ
そして今年の新入部員の中で触れなければいけないのは、やはり沖縄県出身の3人です。
FB普久原琉選手、SO饒平名(よへな)悠斗選手(共にコザ)、SH石川留依選手(美里)。
昨年高校日本代表候補のリストを見ていて、沖縄県の高校から3名もの選手が選出されていることに驚きと感動を覚えましたが、その3名全員が進路を日大に設定する事は正直意外でした。
個人的に普久原選手は2017年度コザ高校の花園初戦(明和県央戦)を解説し、普久原選手(当時2年)の才能に惚れ込み名刺を渡しに行ったとされる村田亙監督が率いる専修大学へ行くものと勝手に思っていました。
そしてかつての名スクラムハーフの下へ続々と集う優秀な才能の一人として、石川選手もまた専修への道を選択するものかと。。。
ただ、3名が同じ大学を選択したという事はそれだけ日大の受入れ環境が充実し、復活への本気度を示したアプローチに大きな魅力を感じたという事でしょう。
沖縄にルーツを持つ私としても、今年から贔屓のチームに日大を加えないわけにはいきません。
ちなみに見たことないという方のために、普久原選手の神業をご覧下さい👇
コザ高 普久原 琉
— 大城 創 (@so_nz1227) November 23, 2017
まじうまい!天才 pic.twitter.com/dbxzgINP8h
普久原選手はスタンドオフにフルバック、饒平名選手はスタンドオフにセンター、石川選手はスクラムハーフ、スタンドオフ、ウィングと複数ポジションが出来るユーティリティ性も魅力の3人。
先に行われた春季大会で既に揃って公式戦デビューも果たしており、この”黄金トリオ”が日大バックス陣の中心を担う日もきっとそう遠い未来ではないでしょう。
同学年には沖縄東中から流経大柏高へ進学し、花園で大暴れした當眞兄弟(真選手⇒流経大、慶選手⇒帝京大)も非常に楽しみな存在。
沖縄の誇る才能が大学というステージでお互い切磋琢磨し、どこまで成長を続けていくのか。
彼らの4年間が今から楽しみでなりません。
強力な留学生コンビ
さらに今年は留学生も強力。
LOイセオファツ・モレコ選手(185㎝/105kg)はU20サモア代表キャプテンを務めU20ワールドトロフィーで活躍した選手。
そしてCTBナサニエル・トゥポウ選手(180㎝/100㎏)はU18フィジー代表として臨んだ昨年のNZ遠征で NZ Barbarian Schoolsに15-10で勝利した時の主力メンバーです。
留学生の出場枠が昨年から3名となり、日大も大きな恩恵を受ける大学の一つ。
そのタイミングで国際レベルでの実績を誇る留学生が来る辺りにも、日大の本気度が垣間見えますね。
春季大会試合結果
<Bグループ>
5月4日 | 日本 | ●31-54 | 法政 | 稲城市G |
5月11日 | 日本 | 〇64-14 | 青山学院 | 青学大G |
5月26日 | 日本 | 〇81-0 | 拓殖 | 日本大G |
6月2日 | 日本 | 〇48-29 | 筑波 | 筑波大G |
6月16日 | 日本 | ●19-66 | 明治 | 明治大G |
<最終順位>
2位:日本大学 3勝2敗
明治の実力がずば抜けているとはいえ、筑波、法政といった強豪校を抑えての2位は立派な成績です。
中でも衝撃だったのは筑波を圧倒したゲームでしょう。
12-17とビハインドで折り返した後半、ラインアウトなどのセットプレーを起点にNo.8シオネ・ハラシリ選手(2年・目黒学院)が怒涛の5トライをあげるなど筑波ディフェンスを完全に粉砕。
お互いに主力が不在だったとは言え、対抗戦の難敵筑波を撃破したことはこれから迎えるシーズン本番へ大きな自信となります。
昨年はアメフト部のタックル問題の余波で辛いシーズンを送った日大ラグビー部。
創部90周年という節目の年に他部の風評被害に巻き込まれた選手たちにとっては、どれだけ苦しい日々を過ごしたかは想像に難くありません。
失墜した”日大ブランド”復活のためには、アメフトと同じコンタクトスポーツであるラグビー部の活躍は大きな後押しとなります。
環境、設備、組織は充実、多士済々なメンバーも集結。
”ヘラクレス軍団”逆襲へ。
今年の活躍から目が離せません。
<新入生情報2021↓>
<卒業生進路と新チーム予想2021↓>