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春シーズンを終えた大学ラグビー。

各校テスト期間を終えたら、次に控えるのは毎年恒例の夏合宿。

厳しい鍛錬を重ねる前半部と試合形式中心の後半部を経て、秋シーズンへ臨むチームの輪郭がいよいよ見えてきます。

今年は9月20日に開幕する日本開催ラグビーW杯の影響で、各リーグ公式戦の開幕が8月下旬に前倒し。

対抗戦、リーグ戦それぞれの開幕戦が菅平開催という事もあり、合宿の最終盤に公式戦が組まれるという変則的な日程となります。

それはつまり夏合宿での練習試合が最終調整の場となり、例年以上に大きな重要性を持つという事。

各校がどのようなマッチメークをし、どのような結果を残すのか⁉

主要大学を中心に夏合宿練習試合の結果を一覧で見ていきたいと思います。

 

大学ラグビー2019 夏シーズン

練習試合日程・結果一覧

7月21日帝京〇63-34流通経済
7月27日明治24-50〇日野自動車
7月28日東海〇26-24日大
8月3日関西学院〇67-14日本文理
8月4日慶應義塾〇66-14東京
日大〇36-27筑波
8月10日慶應義塾12-19〇立命館
同志社〇55-28山梨学院
8月11日明治〇61-20流通経済
8月12日同志社〇31-19法政
8月15日早稲田〇33-14
天理
帝京〇40-5大東文化
8月17日同志社14-41○東海
8月18日早稲田○50-19九州共立
慶應義塾12-52○天理
立命館○68-22中央
京都産業○52-26日本体育
日大○78-7九州共立
8月20日関西学院14-0
(前半14分
霧のため中止)
日本体育
8月21日早稲田○31-21帝京
明治17-49○慶應義塾
8月22日日大○68-14関西大

(情報元:各大学ホームページより)※試合日程・結果は適宜アップしていきます。

やはり例年と比較すると各校とも練習日を確保するために、試合数を抑える傾向にありますね。

例年夏合宿で多くの試合を組む天理は対早稲田、慶應義塾の2試合のみ。

3試合が通例となっている早稲田も夏合宿恒例の帝京戦を含め2試合。(18日の対九州共立戦はBチーム以下で臨むものと予想)

東西の横綱を相手にした試合はどちらも注目です。

昨季の大学選手権王者・明治は7月に対戦した慶應義塾との再戦を最終調整の場に設定しました。

他にも同志社-法政、同志社-東海、帝京-大東文化など楽しみなカードが目白押し。

各校がどのようなメンバーで臨み、どのような戦いを見せるのか、注目していきましょう。

 

注目試合レビュー

① 7月27日(土)@日野自動車総合グラウンド

明治 24-50〇 日野自動車

学生王者明治がトップリーグの日野自動車へ挑んだ一戦。

HO武井主将は不在ながらほぼAチームのメンバーで臨むも、結果はダブルスコアでの敗戦。

トップリーグとは言え、昨季16チーム中14位に沈んだ下位チーム相手のこの結果は少なからずショックを受けました。

気になるのは明治の各選手のコメントに「トップリーグ相手に受けに回ってしまった」という言葉が目立つこと。

かつては大学チャンピオンがトップリーグ勢にチャレンジできる日本選手権があったことで、学生も本気でトップリーグ撃破を目標にやっていました。

トヨタ自動車を撃破した早稲田、NECを粉砕した帝京のように本気で打倒トップリーグを掲げることで、個々の選手の意識、チームとしてのターゲティングが明確で、それが大学ラグビーの底上げにも寄与していたのは間違いない。

それが2017年を最後に大学枠が廃止。

もし今年の明治がトップリーグ勢撃破をチームの最終ターゲットに設定していたとしたら、結果はどうあれ試合後選手からこのようなコメントは出てこなかったのではないか。

ここにも廃止の弊害が生じているような気がします。

各選手のコメントは👇

明大スポーツ:トップリーグ・日野レッドドルフィンズにダブルスコアで敗戦/練習試合

 

② 8月11日(日)@明大八幡山グラウンド

明治 〇61-20 流経大

15人制としては今季初の顔合わせとなった明治と流経大。

流経大は3人の留学生を出場させる本気モード。

春季大会ではラスト2節でリーグ戦のライバル東海大(19-19)、大東大(28-28)と引き分けを演じており、チームはある程度の自信を持って臨んだはず。

しかし結果は完敗。

SO山沢選手、CTB森選手、児玉選手、WTB山村副将ら豪華布陣で臨んだ明治のバックス陣を止められず、前後半を通して9トライを献上。

これから夏合宿へ臨む明治の充実ぶりが露呈する結果となった。

明治はハイレベルなチーム内競争が功を奏している印象です。

各ポジションでレギュラーが保証されたメンバーは殆ど存在せず、射場選手、石川選手、齋藤選手、矢野選手らが控えるセンター、ウィング陣は特に熾烈。

連覇に向けたチームとしてのベクトルの統一、Aチーム出場へ向けた各選手のモチベーションがしっかりと維持されており、隙のないチームになってきています。

対抗戦開幕前最終戦となる慶應義塾戦は次週。

メンバー構成含め楽しみな一戦です。

明大スポーツ:前後半で歯車が噛み合い流経大に快勝 合宿前の一戦で弾みをつける/練習試合

 

③ 8月15日(木)@早大・菅平グラウンド

早稲田 〇33-14 天理

ワセダが昨季大学選手権準Vの天理に勝った。

しかも天理のメンバーはPR谷口祐一郎選手、小鍛治悠太選手、FL岡山仙治主将、そしてNo.8アシペリ・モアラ選手、HB団はSH藤原選手、SO松永選手と昨季の主力がズラリと名を連ねる本気の布陣。

その相手に対し試合中盤からはスクラムで優位に立ち、前半終了間際にはスクラムトライまで奪ったという。

一体何が起きたんだろう。。。

 

にわかに信じられない結果ですが、

ワセダが本気の天理を撃破した‼」

この事実は非常に大きい。

 

早稲田は春シーズン、明治、帝京、東海ら強豪相手にスクラムでことごとく劣勢に回り苦戦を強いられました。

黄金世代が率いる看板のバックスは大学界随一の決定力を誇るも、、、

”このままでは今年も勝てない!”

これは見ているファンの感想だけでなく、チームとしても強く実感したことでしょう。

その反省から6月、7月はスクラム強化に着手。

きっとフォワード陣にとっては地獄の日々だったに違いありません。

そして腕ぶして臨んだ夏合宿初戦。

課題のスクラムで成果を発揮するだけでなく、勝利という結果も残す。

それも、近年早稲田が最も苦手とする、

スクラムに強み

強力な留学生

接点の激しさ

が3拍子揃う相手への快勝劇。

スクラムトライ、そして勝利の瞬間のフィフティーンの咆哮が目に浮かぶようです。

次戦の相手は天理と同じ特性を持つ帝京

先に行われた春季大会で24-61と大敗した元王者相手に、この日と同じ結果を残すことが出来るのか⁉

シーズン開幕を前に見逃せない一戦となります。

早稲田スポーツ:課題のスクラムで天理大に打ち勝ち、好感触をつかむ!

 

④8月18日(日)@菅平サニアパーク

慶應義塾 12-52○ 天理

3日前早稲田に敗れ危機感を募らせる関西王者と、前週立命館によもやの敗戦を喫し浮上のきっかけを掴みたい慶應の注目の一戦でしたが、フォワードに3人、バックスに1人と合計4人の留学生をスタメンに並べた天理が慶應を圧倒する結果に。

公式戦での外国人出場枠が3人に定められている中、

「なぜ天理が留学生4人をスタメン起用してきたのか⁉」

そして「なぜ慶應がそれを受け入れたのか⁉」

疑問は残ります。

その結果(?)なのか天理の強力スクラムが幾度も慶應スクラムを粉砕。

スクラムが潰れればペナルティー、がっちり組めば押し込まれてペナルティー。

慶應にしてみるとこれではなかなかラグビーになりません。

一体早稲田はどのようにこのスクラムを押したんだろう....?

 

映像を見ていないので何とも言えませんが、、

いずれにしても対抗戦開幕まで2週間を切ったタイミング。

次戦で昨季選手権王者明治との一戦を組んでいる慶應は重い課題を突き付けられた形です。

 

そしてバックスの展開力でも天理に軍配。

天理はこの日、元高校日本代表にして今季の副将を務める林田拓郎選手(4年・天理)をスタンドオフに据え、1年時から不動の司令塔を務めてきた松永拓朗選手(3年・大阪産大)をセンターで起用。

昨年までなかった”ダブル司令塔”の形をとった事で、持ち前の展開力に磨きがかかり、さらに的が絞りづらいバックス陣が形成されていました。

先に行われた春季トーナメント、そして早稲田戦は昨季同様(SH藤原、SO松永)のHB団を採用していたため、どちらをファーストチョイスとするか分かりませんが、林田選手の展開力を生かすためにはこのオプションもありだと個人的には感じます。(課題はセンターとしての松永選手のディフェンスでしょうか。)

天理はこれで夏合宿の練習試合を終え、8月31日の関西リーグ開幕戦(大阪体育大戦)に備えます。

 

⑤ 8月21日(水)@菅平サニアパーク

早稲田 〇31-21 帝京

菅平へは行けなかったのでJ-Sports On Demand(JOD)で観戦。

夏合宿の練習試合をどこにいても見れるというのは本当に有難いことです。

試合は早稲田が天理に続いて帝京も撃破。

仕上がりの良さを見せつける結果となりました。

天理を押し込んだと言われる注目のスクラムはというと、

試合序盤は優勢だった(ペナルティ2本獲得)ものの、中盤からは逆に3本のコラプシングを取られるなどいつのまにか形勢逆転。

この試合を見る限りではスクラムの優劣は何とも言えませんが、春季大会でボロボロに粉砕されたことを考えると、この数か月での改善効果は目を見張るものがあります。

天理を押し込んだというニュースも決してフロックではないと確信しました。

帝京はスタメンに留学生が一人もいなかったため、この結果を決して鵜吞みにはできませんが、

・前半を7失点に抑えたディフェンス

・威力を発揮したドライビングモール

・SO岸岡選手の的確なエリアマネジメント

・エースの風格すら漂うCTB長田選手の成長

これらはシーズン本番に向けて大きな収穫。

そして何より天理、帝京という苦手としてきたチームを相手に勝ち切った事で、大きな自信を得た事でしょう。

シーズンインが楽しみです。

 

 

帝京の課題は規律の部分でしょうか。

相手のオフェンスを最少人数でどっしり受け止めて、隙を逃さず襲い掛かる。

それが帝京の強さでしたが、この試合を見ているとその余裕が感じられませんでした。

一人一人のタックルの部分、そして密集内での不用意なペナルティの多さが何よりも気になる点です。

帝京にとって早稲田は絶対に負けてはいけない相手。

この敗戦がシーズンへの劇薬となる事を期待します。

 

⑥ 8月21日(水)@菅平サニアパーク

慶應義塾 〇49-17 明治

A、Bチーム戦を併せて40分 x 3本の変則マッチとして行われた菅平の慶明戦。

Aチームの主力が出場した1本目と2本目の合計スコアを結果として表示していますが、、、

驚きの結果ですね。。。

 

慶應は前の試合で天理大の前にスクラムが崩壊し完敗を喫していました。

フォワードは1人を除いてその試合と同じメンバーで臨みましたが、驚くことにこの試合でスクラムを優勢に組んだのは慶應の方。

改めてラグビーにおけるスクラムの重要性を感じます。

早稲田はこの夏合宿で、春に崩壊させられた帝京、そして関西最強の天理を相手にスクラムで互角以上に渡り合い勝利。

慶應はスクラムで歯が立たなかった天理に完敗し、優位に組んだ明治に完勝。

スクラムが安定するだけで全く別のチームのようにフィフティーンが躍動する慶應の姿が印象的でした。

 

慶應と明治に至っては昨年11月の対抗戦でも慶應が勝っており、慶應が明治を得意としているという、チームとしての相性も大いにあるとは思いますが、セットプレーの安定はやはりラグビーには不可欠ですね。

夏合宿で立命館、天理に敗れ、暗雲立ち込めた慶應も、昨季大学王者相手に奪ったこの勝利で一定の手応えを得て、開幕へ向かう事が出来るのではないでしょうか。

ここで慶應が大敗すると対抗戦の面白みも少なくなってしまうため、見ている方も正直ホッとした部分があります。

 

一方の明治はどうしてしまったんでしょうか...⁉

フォワードの縦突進では受けに回り、バックス陣には自在に走られるその姿に、王者の風格は全く感じられませんでした。

スクラムの劣勢も気がかりですが、何より淡白だったのはゴール前での密集付近のディフェンス。

明治が密集サイドでここまでトライを奪われるのはちょっと考えられません。

武井主将不在の影響なのか、試合に臨む気持ちの部分なのか、

どこよりもチーム内競争の激しい明治にあって、気持ちの緩みはあってはいけないもののはず。

しっかり立て直して開幕へ臨んでほしいと思います。

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