ベスト4に大東大、東海大の2校が進出した2017年度から一転、1校も『正月越え』を果たせずに終わった昨季の関東リーグ戦勢。
これは対抗戦勢がベスト4を独占した2013年以来となる屈辱でした。
リベンジを期して臨む今季。
各校の力が拮抗する群雄割拠の中、4連勝と開幕ダッシュに成功したのは前年度覇者の東海と、今季復活を懸ける日大の2校。
その一方で大東大、流経大、法政大といった昨季の上位校は苦戦を強いられています。
果たして3枠という限られた出場枠を手にし大学選手権へ出場できるのはどのチームか。
ここではリーグ後半戦注目試合のレビューと共に、出場枠争いの行方を追っていきたいと思います。
タップできる目次
関東リーグ戦1部 日程&試合結果
日程 | 対戦 | 会場 | ||
---|---|---|---|---|
8/31 | 流経大 | ○31-19 | 拓大 | 菅平 |
東海 | ○100-21 | 中大 | 菅平 | |
9/1 | 大東大 | ○33-26 | 専大 | 菅平 |
法大 | 12-34○ | 日大 | 菅平 | |
9/7 | 専大 | 12-98○ | 東海 | セナリオ |
9/8 | 日大 | ○34-28 | 流経大 | たつのこ |
中大 | 5-41○ | 法大 | セナリオ | |
拓大 | ○26-22 | 大東大 | 熊谷B | |
9/14 | 中大 | 33-64○ | 流経大 | 秋葉台 |
大東大 | 33-40○ | 日大 | 上柚木 | |
東海 | ○50-14 | 拓大 | 上柚木 | |
9/15 | 法大 | 25-26○ | 専大 | 足利陸 |
11/3 | 日大 | 7-50○ | 東海 | 東京ガス |
流経大 | ○57-33 | 専大 | 熊谷B | |
大東大 | ○36-17 | 中大 | 熊谷B | |
拓大 | 24-28○ | 法大 | セナリオ | |
11/9 | 流経大 | ○22-21 | 大東大 | 秩父宮 |
東海 | ○46-15 | 法大 | 秩父宮 | |
11/16 | 法大 | 14-24○ | 大東大 | 秩父宮 |
流経大 | 21-26○ | 東海 | 秩父宮 | |
専大 | ○24-17 | 拓大 | ニッパツ | |
11/17 | 日大 | ○83-5 | 中大 | セナリオ |
11/24 | 中大 | ○17-14 | 拓大 | 江戸川 |
専大 | 21-29○ | 日大 | 江戸川 | |
11/30 | 東海 | ○27-18 | 大東大 | 秩父宮 |
拓大 | ○29-26 | 日大 | 熊 谷 | |
法大 | 25-43○ | 流経大 | 熊 谷 | |
中大 | 5-26○ | 専大 | 上柚木 |
各節注目試合レビュー
第5節(11/9)
流経大 ○22-21 大東大
第2節で日大に敗れ3勝1敗で迎えた流経大と、拓大・日大に屈し苦しい戦いを強いられている大東大。
ここで敗れると選手権出場争いから大きく後退するというどちらも負けられない一戦は、最後ペナルティキックの選択が勝敗を分ける結果となりました。
22-21と流経大リードで迎えた後半ロスタイム。
敵陣深くに攻め込んだ大東大は右タッチライン際やや中央寄りの位置でペナルティを獲得。
ペナルティゴールを決めれば逆転勝利という場面。
PKを主張する選手、タッチを指さす選手もいる中、大東大の選択はスクラム。
しかしスクラムはうまく押し切ることが出来ず、最後は味方センターが苦しい体制から放ったパスがインターセプトされ無念の終戦という結果に終わりました。
この試合では、開幕から3試合でプレースキッカーを務めたSO高本海斗選手(3年・大阪桐蔭)が前節に続きベンチスタート。
代わってキッカーを務めるSH南昂伸選手(3年・御所実)は、前の中央戦で6本中3本を外すなどキックの正確性を示すことは出来ていませんでした。
しかしこの試合では、3本中3本を成功させるなど当たりを見せており、本人も最後の場面ではペナルティキックを主張する姿が見られましたが、最終選択はスクラム。
チームとしてはキックへの信頼度が、勝敗を左右する局面を任せれるまでには至っていなかったということでしょう。
ただ、今回のワールドカップを見ていても、SOスコット・ポラード選手(南アフリカ)、CTBオーウェン・ファレル選手(イングランド)、SOリッチー・モウンガ選手(NZ)、そしてジャパンではSO田村優選手のように、上位に残った国にはここぞという場面でキックを任せられる選手が必ずと言っていいほど存在していました。
スクラム、ラインアウトなどセットピースもさることながら、『ペナルティキックの重要性』も今回のワールドカップでは勝敗を大きく分けるポイントとして改めて示された要素。
やはりこの部分で選択に迷いが生じていては、競った展開をものにしていくことは厳しくなってしまいます。
最後のインターセプトに繋がったパスも、昨年から再三見られた不用意なボール捌きから生じたもの。
チームとしての課題がまだまだ徹底しきれていない。
これが今季の大東大の苦戦を物語っている印象です。
この敗戦で3位以内確保は現実的に厳しくなってしまいましたが、次節の法政戦に敗れると上位進出はおろか入替戦の可能性も出てくる状況になってきました。
長い低迷を経てようやく復活を遂げた”モスグリーン軍団”がこのまま終わっていいはずはありません。
ここからの意地に期待しましょう。
一方の流経大は試合を通じて失ペナルティを3つに抑え、ディフェンスの集中力を最後まで維持しての粘り勝ち。
最後は相手の拙攻に助けられた印象はありましたが、昨季14-46と粉砕された相手へ見事リベンジを果たし、チームは上昇気流です。
次戦の相手は5戦全勝の首位東海大。
昨季リーグ戦では33ー33の引き分け、そして今年の春季大会でも19-19と引き分けるなど、前評判に関係なく例年拮抗した展開となるこのカード。
調子を上げてきた流経大の意地が爆発するのか。
それとも東海が王者の実力を見せつけるのか。
注目の一戦です。
東海大 ○46-15 法政大
今季ここまで下位校相手に1勝3敗と苦しむ法政にとっては、日本一をターゲットにする東海に力の差を見せつけられた結果です。
勝ちきることは確かに難しいと思われる試合でしたが、
・後半開始直後の東海フォワードをめくり上げたスクラム
・後半31分のトライに繋がった怒濤のドライビングモール
・この試合ではセンターに入ったジョーンズ杏人竜選手(3年・札幌山の手)の突破力
など、随所に光るプレーは見られました。
特に近年上位校相手に苦戦が続いていたスクラムは、この試合では獲得率100%(7分の7)と奮闘。
さらに、”リーグ最強スクラム”を誇る東海を押し込んだ姿には感動すら覚えました。
それだけに、トライ直後のキックオフから相手ウィングの杉山祐太選手(3年・東海大相模)にあっさりトライを献上した場面に象徴されるように、『継続性』という部分で我慢が続かない展開にもどかしさを感じてしまいます。
チームをまとめる井上拓主将(4年・御所実)も離脱中と、なかなかチームとして乗り切れない状況が続きますが、終盤戦に入るこの時期にそうは言っていられません。
次節大東大戦は、結果次第ではお互い入替戦も視野に入ってくる正念場。
『オレンジ軍団』対『モスグリーン軍団』
大一番で名門の意地を見せるのはどちらか!?
見逃せない一戦となります。
第6節(11/16・17)
東海大 ○26-21 流経大
正直東海がここまで苦しむことは予想できませんでした。
今シーズンの仕上がりからすると東海が20点差位はつけるのではないかと思っていましたが、やはりこの2校の戦いは簡単にはいきませんでしたね。
ただ最終的に劇的勝利をものにしたとは言え、東海の勢いに衰えが見られるのは気がかりです。
この試合は留学生をスタメンに起用せず臨みましたが、3人の留学生を並べフィジカルを前面に押し出してきた相手に大苦戦。
後半は原点に立ち戻りドライビングモールを中心に何とか逆転に成功しましたが、”東海が底力を発揮した”というよりは、流経大の拙攻に助けられた部分が大きく、大学選手権に向けては不安が残る内容でしょう。
ただ、5月の招待試合で大けがを負い、長いリハビリを経て今季初出場を果たした丸山凛太郎選手(2年・東福岡)の復帰は好材料です。
東福岡高時代に日本一を経験し、昨季も真野泰地主将(4年・東海大仰星)とダブル司令塔として、バックス陣を牽引したその実力は折り紙つき。
ここから強豪との厳しい連戦が続く中で、強気なプレーでチームを引っ張れる丸山選手の存在は、リーグ終盤で停滞感の漂う東海にとって起爆剤となり得る要素です。
次節大東大戦は真野主将も復帰予定。
丸山選手とどのようなコンビネーションを見せるのか。
非常に楽しみです。
一方の流経大にとっては最後の最後で残念な結果となってしまいました。
前半、流経大の意地と躍動が試合を見応えのあるものにしてくれたことは間違いありません。
ただ、『勝ち切る』という部分では、いい意味での”したたかさ”が足りないように感じます。
後半最終盤にリードしている状況で、東海の仕掛けるキック合戦に付き合う必要があったのか?
残り2分を切った時点でボールキープに切り替えることは出来なかったのか?
あの時間帯でキックを蹴り合うシーンが、まるで東海にチャンスボールを与え続けているような光景に映りました。
前節は大東大相手に1点差で逃げ切りましたが、最後は大東大の拙攻に助けられた部分があり、『試合の終わらせ方』という点では、まだまだ課題が残ります。
リーグでは強豪ながら、大学選手権ではなかなかベスト8の壁を破れない原因は、その部分の差にあると感じます。
最終節の相手は、昨季、後半に逆転を許し1点差で屈した法政大。
自力での大学選手権出場のためにも、勝って弾みをつけたいところです。
大東大 ○24-14 法政大
勝てば選手権争いに踏みとどまり、負ければ入替戦も視野に入る。
どちらにとっても重要な一戦でしたが、法政にとっては前半35分のキックミスが痛かったです。
序盤からトライの応酬が続き14-14と同点で迎えた前半34分。
敵陣でのマイボールスクラムで法政はスクラムを押し込んでペナルティを獲得。
格上と見られていた大東大の強力スクラムをめくり上げたことで、チームの士気は上昇ムード。
ここでトライを取れば試合の主導権は一気に法政へ傾くと思われました。
しかし、敵陣深くを狙ったタッチキックは無情にもデッドボールラインの外へ。
蹴った時点に戻されたリスタートのスクラムから攻勢を受け続け、前半ロスタイムに相手スクラムハーフの南選手(3年・御所実)にトライを奪われ14-19。
法政は後半に入りディフェンスを立て直してきた大東大の前にその後無得点に終わったため、結果的にこのプレーが試合の流れを左右するポイントになってしまいました。
負傷離脱していたWTB井上拓主将(4年・御所実)、FB根塚洸雅選手(3年・東海大仰星)が復帰し、今シーズン初めてベストメンバーと呼べる布陣で臨んでの敗戦。
開始2分で先制トライを奪うなど試合序盤の入りが非常に良かっただけに、この結果は非常にショッキングです。
この結果、法政は2勝4敗で暫定5位と厳しい状況に追い込まれました。
ただ、入替戦争いの鍵を握る6位拓殖大と7位専修大の試合で、専大が勝利を挙げたことは法政にとって朗報です。
リーグ戦は勝ち点で並んだ場合、『直接対決での勝者』が上の順位となるレギュレーション。
法政は専大に敗れていますが、拓大には勝利を挙げています。
例えばこのまま最終戦も敗れ2勝5敗となった場合、勝点が13で並ぶのが拓大なのか専大なのかは大きなポイントでした。
1部復帰を目指す関東学院大がリーグ戦2部で2位に決まり、1部7位との入替戦は厳しい戦いが予想されるだけに、法政にとっては有利な展開になったと言えます。
ファンとしてはそういう話をすること自体がさみしい限りですが。。。
最終戦の相手は昨季撃破した流経大。
ここまで来たら一戦必勝。
『井上組』の集大成を見せてほしいと思います。
一方の大東大はこれで後半戦2勝1敗と勝ち越し、通算3勝3敗のタイに戻しました。
まだまだミスの多さは目立ちますが、リーグ戦1部の展望で課題に挙げていた『失点の多さ』がリーグ前後半で、
前半戦3試合:31点
後半戦3試合:17点
と大きく改善されたことで、チームとしては立ち直りを見せている印象です。
最終節で流経大が法政に敗れたとしても、流経大との直接対決で敗れているため、3位以内確保は現実的に厳しい状況に変わりはありませんが、全ては最終戦で東海に勝ってからの話。
ここで奮起するのか、それとも為すすべ無く敗れるのかでは、来季の復活へ向けた道のりは大きく変わってきます。
東海の1強阻止へ!
『佐々木組』最後のプライドを見せてほしいと思います。
最終節
東海大 ○27-18 大東文化大
既に優勝を決めている東海と、最終戦に懸ける大東大のメンタルの差が出たような試合内容でした。
大東大は佐々木剛主将を中心にフィジカルで対抗し、ラスト10分まで東海を2点差で追い詰めましたが、ロスタイムにダメ押しのトライを献上し終戦。
拓殖大、日大、流経大戦で見られたように、接戦で最後取り切れないという課題は、シーズン最後まで克服することは出来ませんでした。
それでも随所に気持ちの入ったプレーは見られ、その意地が来年度に繋がっていくのではないかと感じます。
灯り始めた『モスグリーン軍団』復活の火を消してはいけない。
SH南選手(3年・御所実)を中心とした3年生以下の奮起に期待したいと思います。
そして東海は”笑顔無き優勝”となってしまいましたね。
第4節で事実上の『優勝決定戦』と見られた日大戦でピークを迎えてしまったかのように、ラスト3試合はエンジンのかかりきらない不本意な内容に終始しました。
充実の対抗戦勢、そして関西王者・天理の待つ選手権で上位進出を図るためには、ギアを入れ替えなければ先は見えてきません。
”世代最高のリーダー”真野泰地主将率いる今季。
選手権ではリーグ戦王者の意地を是非見せつけてほしいと思います。
流経大 ○43-25● 法政
法政は完敗という結果で最終戦を終えることになりました。
井上拓主将(4年・御所実)を始めとする主力の負傷離脱など、今季はなかなかベストメンバーを組めず苦労したシーズンでした。
LOウォーカーアレックス拓也選手(4年・東福岡)、SH中村翔選手(4年・)ら下級生時代から主力を務めてきたメンバーは卒業を迎えますが、FL山下憲太選手(3年・長崎海星)、CTB根塚洸雅選手(3年・東海大仰星)ら若い芽は確実に育ってきています。
2年連続で王者となった東海大がシーズン終盤は勢いを失ったように、最後まで優勝争いを演じるライバル校の存在無くしては、リーグ戦の火は消えてしまいます。
やはり法政と大東大は常に優勝に絡む活躍が求められるチーム。
どちらも厳しい状況は続きますが、また来季いいチームを作り上げてこの舞台に戻ってきほしいと思います。
順位表(全日程終了)
順位 | チーム | 勝点 | 勝数 | 負数 | 得点 | 失点 | 点差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
優勝 | 東海大 | 28 | 7 | 0 | 397 | 108 | 289 |
2 | 日 大 | 22 | 5 | 2 | 253 | 178 | 75 |
3 | 流経大 | 22 | 5 | 2 | 266 | 191 | 75 |
4 | 大東大 | 16 | 3 | 4 | 187 | 172 | 15 |
5 | 専 大 | 16 | 3 | 4 | 168 | 264 | -96 |
6 | 法 大 | 13 | 2 | 5 | 160 | 202 | -42 |
7 | 拓 大 | 13 | 2 | 5 | 143 | 198 | -55 |
8 | 中 大 | 10 | 1 | 6 | 103 | 364 | -261 |