リーグ戦のラストを飾る早明戦が終了し、今年も大学選手権へ出場するチームが出揃いました。
『令和初』,『ワールドカップイヤー』,『新・国立競技場開催の決勝戦』と、話題盛りだくさんの今大会。
しかし、やはり大学ラグビーファンとしての注目は、、
『明治の2連覇なるか!?』
『天理のリベンジか!?』
『早稲田復活か!?』
『帝京の逆襲は!?』
この辺りになってくるでしょうか。
やはり贔屓にしているチームの状況は気になるところ。
果たして今季の戦力図はどのようになっているのか!?
ここでは各リーグを戦い抜き、出場権を手にしたチームのここまでの戦いぶりと出場メンバーから大学選手権での展望と予想布陣を見ていきたいと思います。
まずは前年度の覇者明治が所属する関東対抗戦Aグループから行ってみましょう。
タップできる目次
大会スケジュール
(情報元:日本ラグビーフットボール協会)
組み合わせ表
シードとなる早明両校は準々決勝からの登場。
連覇を目指す明治は比較的楽なゾーンに入ったと言えるでしょう。
第1シードへ与えられるアドバンテージはやはり大きいものがあります。
その一方で3回戦から登場する帝京と筑波はどちらも厳しい組み合わせとなってしまいました。
正月越えを果たすためには天理、東海と両リーグの王者を撃破する必要があり、両校にとっては長く険しい道のりが待ち受けます。
ただファン目線で見ると、帝京vs天理、筑波vs東海の準々決勝は、是が非でも見てみたいカードであることは間違いありません。
対抗戦Aグループ 代表校顔ぶれ
それでは代表校の対抗戦での成績と予想布陣を見ていきましょう。
明治大学 (11大会連続48回目)
対抗戦戦績
優勝:7勝0敗
8月31日 | 明治 | ○59-33 | 筑波 |
9月8日 | 明治 | ○139-0 | 成蹊 |
9月15日 | 明治 | ○103-0 | 日体大 |
11月4日 | 明治 | ○63-12 | 青学大 |
11月10日 | 明治 | ○40-3 | 慶應 |
11月24日 | 明治 | ○40-17 | 帝京 |
12月1日 | 明治 | ○36-7 | 早稲田 |
菅平開催となった開幕戦こそ筑波に差し込まれる場面が見られるも、その後は着実なボトムアップに成功し、全く隙の見当たらないチームへと進化を遂げた明治。
夏合宿で大敗した慶應、逆襲に燃える帝京、戦力充実の早稲田と続いたリーグ終盤戦では、スクラム、ラインアウト、ブレイクダウンなど、あらゆる局面で相手を上回り圧巻の3連勝。
混戦が予想された今季の対抗戦も、蓋を開けてみれば最多得点、最少失点を記録した明治が全勝優勝。
紫紺の充実ぶりが目立つ結果となりました。
選手権では関西リーグ王者の天理、リーグ戦王者の東海も対抗馬に挙げられますが、では「明治を脅かす力があるか?」と、問われればまだまだ疑問符がつく状態。
現時点で日本一へ最も近い位置にいるチームであることは間違いありません。
予想布陣
1 PR | 2 HO | 3 PR |
4 LO | 5 LO |
|
6 FL | 8 No.8 | 7 FL |
9 SH | ||
12 CTB | 10 SO | 13 CTB |
11 WTB | 15 FB | 14 WTB |
序盤は主力に怪我人の離脱が見られましたが、慶應戦辺りからメンバーはほぼ固定。
選手権本番へ向けいよいよ戦う準備が整ってきた印象です。
昨季決勝のスタメン10人が名を連ねる布陣は、”経験値”,"成熟度","タレント力"ともに大学界No.1。
それに加え、HO松岡賢太選手(4年・京都成章)、CTB児玉樹選手(2年・秋田工)、WTB石川貴大選手(4年・報徳学園)らもベンチに控えており、例え主力に怪我人が出たとしてもこのチームの根幹が揺らぐことはないでしょう。
まさに連覇へ向け盤石な布陣と言えます。
早稲田大学 (36大会連続53回目)
対抗戦戦績
2位:6勝1敗
8月31日 | 早稲田 | ○68-10 | 日体大 |
9月8日 | 早稲田 | ○92-0 | 青学大 |
9月15日 | 早稲田 | ○52-8 | 筑波 |
11月4日 | 早稲田 | ○120-0 | 成蹊 |
11月10日 | 早稲田 | ○34-32 | 帝京 |
11月23日 | 早稲田 | ○17-10 | 慶應 |
12月1日 | 早稲田 | ●7-36 | 明治 |
夏合宿以降連勝街道をひた走り、帝京には劇的逆転で9年ぶりとなる公式戦勝利。
戦力も充実し、明治の対抗馬筆頭と目された今季の早稲田。
しかし早明戦での完敗により、ここまで懸命に築き上げてきた自信はあえなく崩壊。
覇権奪還へ向け、厳しい現実を叩きつけられる格好となりました。
中でも夏合宿で天理、帝京相手に互角以上にわたりあった『スクラム』や、高い獲得率を誇ってきた『ラインアウト』が、ここにきて不安定な姿を露呈している点は大きな不安要素です。
バックスには”大学界随一”と評されるビッグネームが名を連ねるため、頂点へ登り詰めるためにはやはりフォワードの立て直しが急務です。
トーナメント初戦の相手は日大と京産大の勝者。
どちらも好チームですが、特に日大はリーグ戦で流経大、大東大を粉砕するなど破壊力抜群のスクラムを誇り、今季”台風の目”となりうる存在。
早明戦のようにセットプレーから崩されるようだと、早稲田にとっては厳しい展開を強いられます。
長いトンネルを抜け正月越えを果たした昨季以上の成績を残すためには、ここで足止めを食うわけにはいきません。
『準決勝で天理を返り討ちにし、決勝で明治にリベンジ。』
このシナリオが実現したとすれば、『新・国立競技場』はワールドカップ級の歓喜の渦に包まれることになるでしょう。
11年ぶりの『荒ぶる』奪還。
積年の想いを爆発させ、グラウンドで躍動するアカクロの姿を是非見せてほしいと思います。
予想布陣
1 PR | 2 HO | 3 PR |
4 LO | 5 LO |
|
6 FL | 8 No.8 | 7 FL |
9 SH | ||
12 CTB | 10 SO | 13 CTB |
11 WTB | 15 FB | 14 WTB |
シーズン終盤にかけてメンバーもほぼ固定され、今季のチームの最終形が見えてきました。
大黒柱のSH齋藤直人主将(4年・桐蔭学園)、SO岸岡智樹選手(4年・東海大仰星)のHB団が、大きな怪我なく元気な姿を見せていることは心強い限り。
そして、肉離れによりリーグ終盤戦を欠場していたCTB中野将伍選手(4年・東筑)がいよいよ戦列復帰間近。
圧倒的なフィジカルを誇り、”フィニッシャー”、”ペネトレーター”としてだけでなく、今季は”周りを生かすプレー”でも別格の存在感を誇る同選手。
ファンが待ち焦がれた大黒柱の帰還は、早稲田復活の”ラストピース”となりうる可能性大。
否が応でもその期待感は膨らんできます。
また、ルーキーながら”アカクロの7番”をがっちり確保したFL相良昌彦選手(1年・早稲田実)も、選手権には腰痛から復帰見込み。
ベストメンバーが揃ったとき、果たしてどれだけの爆発力を誇るチームへ変貌を遂げるのか。
躍動する姿が今から楽しみです。
帝京大学 (21大会連続27回目)
対抗戦A戦績
3位:4勝3敗
9月1日 | 帝京 | ○78-7 | 成蹊 |
9月8日 | 帝京 | ○59-30 | 日体大 |
9月14日 | 帝京 | ○80-7 | 青学大 |
11月4日 | 帝京 | ○24-22 | 筑波 |
11月10日 | 帝京 | ●32-34 | 早稲田 |
11月24日 | 帝京 | ●17-40 | 明治 |
11月30日 | 帝京 | ●24-29 | 慶應 |
早慶明によもやの3連敗を喫し、かつてないほどの苦難に喘ぐ”元”絶対王者・帝京。
試合を見ていて何よりも気がかりなのは、チームから”自信”と”オーラ”が全く感じられなくなっていること。
ディフェンスは淡泊、セットプレーは不安定、攻めてもハンドリングエラーを連発。
憎らしいほどの落ち着きと、戦慄を覚えるほど鋭い集中力を誇ったかつての姿はそこにはなく、わずか1年王座から離れただけで、ここまでチームは変わってしまうものか、と驚きと共にショックを拭いきれません。
今年の大学選手権は優勝をターゲットとする前に、失われた自信を取戻すことがまず先決です。
トーナメント初戦の相手は、リーグ戦3位ながらも終盤着実に力を伸ばしてきた流経大。
そして、その先には昨季10連覇の夢を打ち砕かれた天理が待ち受けます。
早期復権のためには、まずはこの『死のグループ』を突破すること。
逆にもし3回戦で敗れるようなことがあれば、そのショックは計り知れず、再浮上には長い時間を要しそうな気配が漂います。
その意味でも帝京vs流経大(12/15 12:00@熊谷)は3回戦屈指の注目カードと言えるでしょう。
予想布陣
1 PR | 2 HO | 3 PR |
4 LO | 5 LO |
|
6 FL | 8 No.8 | 7 FL |
9 SH | ||
12 CTB | 10 SO | 13 CTB |
11 WTB | 15 FB | 14 WTB |
対抗戦の明治戦から本郷泰司主将(4年・京都成章)を、本来のセンターからフランカーへコンバート。
シーズンも深まったこのタイミング、『バックス』から未経験の『フォワード』へ、さらにその対象がチームを束ねる主将。
これはまさに異例づくしの人事と言えます。
確かに、本郷選手のストロングポイントであるタックルやフィジカルの強さは、フランカーに求められる特性にマッチしていると感じます。
しかし、フォワードというポジションはどうしてもスクラム、ラインアウトなどのセットプレーを避けて通ることができません。
そして、中でも特にスクラムは日々の練習の積み重ねを経て、シーズンを通してチームとして成熟させていくものであり、フォワード経験のない選手が急造でその役割を担うのはやはり厳しいものがあります。
これから対戦する流経大、天理大はどちらもフォワードに自信を持つチーム。
スクラムを起点に崩されていった明治戦の二の舞にならないことを願うばかりです。
そして今年の帝京はスタメンを固定せず、多くのメンバーにチャンスを与えながら、ここまで戦ってきたチームでもあります。
不動と見られたSO北村将大選手(3年・御所実)をベンチスタートにしたり、筑波戦では試合終了直前まで本郷主将をベンチに温存したり、と数々のパターンを試してきています。
見ていて正直、なぜ??と感じるところも多かったのは事実ですが、百戦錬磨の岩出監督が意図も無くそれらを実践するはずはありません。
果たしてメンバーの『最適解』は見つかったのか!?
選手権初戦ではその辺りにも注目して見ていきたいと思います。
筑波大学 (2大会連続22回目)
リーグ戦戦績
4位:4勝3敗
8月31日 | 筑波 | ●33-59 | 明治 |
9月8日 | 筑波 | ○17-14 | 慶應義塾 |
9月15日 | 筑波 | ●8-52 | 早稲田 |
11月4日 | 筑波 | ●22-24 | 帝京 |
11月10日 | 筑波 | ○87-19 | 成蹊 |
11月23日 | 筑波 | ○46-23 | 日体大 |
12月1日 | 筑波 | ○59-21 | 青学大 |
上位校との連戦が続いた序盤戦は、苦労しながらも第2節で慶應に劇的な逆転勝利。
この勝利が最後に大きくものを言うことになった今季の筑波。
シーズン終盤を3連勝で飾りその勢いのまま選手権に臨めるという点では、3連敗で突入する帝京とは置かれた状況は大きく異なります。
もともとポテンシャルの高いチームであることに疑いは無く、対戦するチームにとってはやっかいな相手となることは間違いありません。
初戦の相手は関西リーグを2位でフィニッシュした”古豪”同志社。
バックスに豊富なタレントを擁しますが、フォワードも含めた総合力では筑波が上。
看板の”ブレイクダウン”で圧力をかけ続けることが出来れば、おのずと勝利は見えてきそうです。
3回戦を突破すれば準々決勝ではリーグ戦王者東海との激突。
リーグ戦最強フォワードを擁する東海に対し、対抗戦4位の筑波がどこまで戦うことができるのか。
この対戦は今季の『対抗戦』と『リーグ戦』の力関係を図る上でも非常に興味深い一戦となりそうです。
予想布陣
1 PR | 2 HO | 3 PR |
4 LO | 5 LO |
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6 FL | 8 No.8 | 7 FL |
9 SH | ||
12 CTB | 10 SO | 13 CTB |
11 WTB | 15 FB | 14 WTB |
フォワードはNo.8のポジション以外、ほぼ固定メンバーで戦い抜くことが出来、ここまで大きな怪我人もなく仕上がりは順調と言えそうです。
気がかりなのはバックス陣。
今チームの精神的支柱でもあるSH杉谷優平主将(4年・大阪桐蔭)が11月4日の帝京戦を最後に試合へ出場しておらず、さらにバックスの中心を担う野中亮志選手(4年・東海大仰星)と岡﨑航大選手(3年・長崎北陽台)の両センターも負傷離脱中。
特に、岡﨑選手は帝京戦で負傷退場するまで、全ての試合でビッグタックル、ビッグゲインを連発するなど、チームでMVP級の活躍をしていただけに、この選手が欠場するとなると選手権上位進出へ暗雲が立ちこめます。
今季は闘将杉山主将を中心に、見ている人の心を揺さぶる好チームを作り上げてきているだけに、是非ベストメンバーで選手権に臨んでくれることを期待しています。