この前は私がラグビーと出会った1990年代の早稲田ベストフィフティーンをご紹介しました。
90年代は早明の歴史と言ってもいいほど両校の激突が熱い時代。
そして2000年に入ると早稲田、関東学院時代、そして帝京の1強時代へと時代が変遷してきています。
“黄金時代から低迷期へ”
前半の隆盛と相反して、徐々にその勢いに陰りが見え始めたこの時代。
その中でもキラ星の如き才能が毎年早稲田には所属していました。
そこで今日は「早稲田ベストフィフティーン!」の第2弾として2000年代から"ベスト15"を選んでみたいと思います。
タップできる目次
2000年代早稲田ベストフィフティーン
1 PR | 2 HO | 3 PR |
4 LO | 5 LO |
|
6 FL | 8 No.8 | 7 FL |
9 SH | ||
12 CTB | 10 SO | 13 CTB |
11 WTB | 15 FB | 14 WTB |
フォワード陣
フロントロー(PR・HO)
第1列は日本代表でも活躍し、現在でも現役で活躍する青木佑輔選手(国学院久我山)と畠山健介選手(仙台育英)のサントリーコンビ。この時代の早稲田は清宮監督効果で全国からアスリートが続々と集まってきた時代でした。
そしてもう一人のPRは諸岡省吾選手(国学院久我山)を選びました。
同級生には伊藤雄太選手、後藤翔太選手、安藤栄治選手、内藤慎平選手など低学年の頃から活躍したメンバーが多くいた年でしたが、
キャプテンに選ばれたのは諸岡選手。
正直キャプテンと聞いて意外な印象を持ったのを覚えていますが、その実直なプレースタイルに冷静さと熱さを持ち併せたリーダーシップで、前年度の大田尾組が果たせなかった大学日本一を見事に達成。
当時の清宮監督に
「この代のキャプテンは諸岡しかいない!」
と言わしめたそのキャプテンシーを見事に発揮しました。
ロック陣(LO)
ロックには90年台の低迷から13年ぶりの復活を果たした“山下組“の暴れん坊高森雅和選手(市川東)。
強さと走力を兼ね備えた豪快な突進と持ち前の嗅覚で、”トライを取れる”ロックとして大活躍しました。
13年ぶりの覇権奪回はこの人の存在をなくしては果たせなかったと言える程FW陣では群を抜く存在感を発揮していましたね。
そしてもう一人は2001年度主将左京泰明選手(東筑)です。
“清宮ワセダ”1年目の主将として、派手さはないものの卓越したキャプテンシーで、見事決勝までチームを導きました。
試合後のキャプテンインタビューでの仲間、ファンを思う受け答えなど、常に周りを冷静に見つめ、気遣う態度と姿勢はまさに早稲田のキャプテン。
この翌年復活優勝を果たした”山下組”に焦点が当てられがちですが、私は早稲田復活の礎を気付いたのはこの人だと思っています。
バックロー(FL・NO.8)
バックローは羽生憲久選手(早実)、布巻峻介選手(東福岡)、佐々木隆道選手(啓光学園)を選びました。
1人目の羽生選手は山下大悟選手、高森雅和選手、上村康太選手(国学院久我山)などと同級生で、いわゆる“山下組“の一員です。
170cmに満たない小さな体から信じられないほどの強烈なタックルを食らわせる選手。
どれだけ大きな選手だろうと、どれだけ早い選手だろうとこの選手のターゲットとなった選手は一たまりもありません。
狼の様な目から、一寸の迷いもなく頭から低く早く突き刺さるタックルで強豪校の並み居る猛者達を、幾度となく餌食にしてきました。
その運動量も半端なく、この選手ほど“狂気”という言葉が似合う選手は見た事がありません。
そして、もう一人のフランカーは布巻選手。
東福岡から”超高校級”の逸材として入部したこの選手。
入学当時はセンターでしたが、大学3年時にフランカーへ転向し、昨年には日本代表に初選出、今年はサンウルブズに選ばれるなど、まさに今をときめく選手です。
世界規格に比べるとサイズは見劣りするものの、強靭なフィジカルから繰り出されるタックルとジャッカルは既に世界基準。
今後のさらなる躍進が期待されます。
そして、ナンバーエイトは佐々木選手。
1年生からレギュラーを張り続けた男ですが、入ってきた当時は線の細さと、ここぞと言う場面でのミスなど脆さが目立つ印象の選手でした。
しかし上級生になるにつれ、元来持ち合わせていたリーダーシップも相まって、徐々にチームに欠かせない存在感を発揮する選手へ。
そしてやはり圧巻は主将として臨んだ2005年度の日本選手権、あの伝説の“トップリーグ撃破“でしょう。
トップリーグ4位として臨んだトヨタ自動車を相手に真っ向勝負を挑み28-24と粉砕。
清宮体制5年目の集大成として見事に結果を出して見せました。
あの清宮監督に“リアルリーダー”と言わしめた男。
この選手を外すわけにはいかないでしょう。
バックス陣
ハーフバック団(HB)
ハーフバックは左京組、山下組で大活躍した田原耕太郎選手(東福岡)と今でもヤマハ発動機で違いを見せつける男、大田尾竜彦選手(佐賀工)を選びました。
田原選手は早稲田の先輩月田伸一選手(98年卒)から継承される東福岡の系譜。
柔らかく正確なパスワークと端正なルックスでファンを魅了。
後に出てくる矢富選手のような攻撃的スクラムハーフとタイプは異なりますが、5年生として迎えた2002年度シーズン、山下組13年ぶりの覇権奪回を支えた伝説のメンバーの一人です。
この選手が卒業せずに残ってくれたことがどれだけ心強かったか。今でもその当時の記憶が蘇ってきます。
そしてスタンオドフはやはり大田尾選手でしょう。
佐賀工から鳴り物入りで入部した逸材は2年生の終盤から頭角を現しました。
山下組では不動のSOとして覇権奪回に貢献。
翌年は惜しくも優勝には届かなかったものの、キャプテンとしてチームを準優勝に導きました。
ベテランとなった今でもヤマハ発動機の初の日本一の原動力になるなど、いぶし銀の活躍を見せています。
早稲田時代は気性の激しさから、ラフプレー、暴言など正直頂けない部分も露呈しましたが、プレーヤーとしては間違いなく”2000年台No.1スタンドオフ”と言えるのではないでしょうか。
センター陣(CTB)
センターは技巧派ではなくクラッシュ派を2人選出しました。
1人目は山下大悟選手(桐蔭学園)、この選手は絶対に外すわけにはいきません。
彼が大学ラグビーに現れた当時、ボールを持つだけで何かしてくれそうな雰囲気を醸し出していた選手。
1~3年時はその潜在能力をいかんなく発揮し、主に突破役として活躍。
そして主将となった4年時はパスプレーにも磨きがかかり、自分にマークが集中するところで上手く周りを生かすなど、個性派集団のバックス陣を牽引。
見事”早稲田13年ぶりの覇権奪回”に導きました。
当時、国立でその試合を見ていた私。
生まれて初めて経験する”早稲田日本一”を目の当たりにし、グラウンドで歌われる“荒ぶる”を聞きながら涙を流した事を今でも鮮明に覚えています。
その後の歌舞伎町での祝勝会も含めて大学時代一番の思い出です。
続く2人目のセンターは今村雄太選手(四日市農芸)。
アスリートが集まり始めた当時の早稲田においても随一の才能を持った選手。
初めて見たときの衝撃は山下大悟選手以上だったかもしれません。
矢富選手、曽我部選手、首藤選手といった同期と“黄金のカルテット“を形成、1年生時から早稲田の”黄金時代”を支えました。
しかし、佐々木組、権丈組と前後の世代が日本一になっているものの、この4人を中心とした東条組は日本一へは到達できませんでした。
『清宮ワセダ』から『中竹ワセダ』への1年目、多彩な才能を抱えながらも体制移行がいかに難しいかを感じた年でした。
ウィング(WTB)・フルバック(FB)
最後はワセダの花形ポジション、ウィングとフルバックです。
1人目のウィングは藤田慶和選手(東福岡)です。
言わずと知れた2019年W杯のエース候補の一人。
早稲田では本職のフルバックとして大きな期待がかかりましたが、日本代表、セブンスなどの代表活動との兼ね合いでチームとしての活動は制限。
“ワセダ藤田”としてはなかなか結果を出す事は出来ませんでした。
それでも、彼が出場した試合ではそれまでの試合とは見違えるほどの展開力とラインスピードをチームとして見せるなど、個として違いを生み出す能力はやはり圧巻。
ルーキーイヤーとして挑んだ今季、パナソニックでは悔しいシーズンを送りましたが、来季以降の巻き返し、そして日本代表、サンウルブズでの活躍も期待したいと思います。
もう一人のウィングは、トップリーグ2年目の今年リーグ最多トライとMVPを獲得した中靏隆彰選手(西南学院)。
西南学院出身といわゆる強豪校出身ではないものの、早稲田時代からそのスピードとステップワークは際立っており、速さと強さを兼ね備えたウィングらしいウィングとして活躍しました。
数多の才能が集結するこの激戦区に置いて、全国的には無名校からレギュラーを勝ち取り活躍。
その意味ではまさに昔ながらの早稲田らしい選手と言えます。
来週からスタートするスーパーラグビーサンウルブズにも選出され、今後の活躍がますます注目されます。
そして最後を飾るフルバック。
このポジションは今や日本ラグビー界の顔、五郎丸歩選手(佐賀工)をおいて他にいないでしょう。
早稲田1年目から不動のレギュラーとして最後尾に君臨、正確無比なプレースキックと安定したキック処理、そしてサイズを生かしたカウンターアタックなどで早稲田の黄金時代を牽引しました。
この選手が醸し出す安心感は並の選手では到底生み出せるものではないでしょう。
圧倒的な存在感で早稲田の新たなフルバック像を作り出しました。
卒業後の活躍は語るまでもないですが、現在は世界最高峰のフランスリーグへ挑戦中の五郎丸選手。
恐らくキャリア最後になるであろう2019年W杯をどのような形で迎えるのか。
今後の動向からも目が離せません。
最後に
2回にわたってお送りしてきた年代別早稲田ベスト15。
完全に私の独断と主観で選ばせて頂きました。
時代時代ごとの思い出に浸りながら楽しくこの記事を書いていると、早くも来年の大学ラグビーが楽しみになってきますね。
有名校から続々と入部してしてくるスター候補生と、無名校から”アカクロ”を目指す一般入試組の融合。
いつの時代もこの構図が早稲田の強さと伝統を支えています。
来年度はどのようなチームをまたファンに見せてくれるのか、”山下ワセダ”の2年目にも注目しましょう。