前回は、私の選ぶ早明戦ベストゲーム5選記事を書きました。

どの試合も今も脳裏に焼き付いて離れない感動的な試合ばかり。

しかし、、勝負の世界に勝敗はつきもの。

劇的な勝利があれば、その裏には忘れることのできないショッキングな敗戦もあります。

感動と失望はいつも隣り合わせ。

それこそが勝負の醍醐味であり、その敗戦の経験が勝利をさらに輝かせるものであると言えます。

そこで今回は、私がこれまで目にしてきた中で特に衝撃的だった、早稲田の”敗戦試合”を紹介したいと思います。

5試合を振り返るのは気が重くなるので、衝撃度の大きかった『3試合』を選んでいきたいと思います。

注1:当記事は早稲田ファン目線です
注2:今現在、対戦相手に対してネガティブな感情はありません

早稲田”衝撃の敗戦”ベスト3

第3位 1997年度 対京都産業大学

1997年12月23日@花園ラグビー場

大学選手権 2回戦

早稲田大 ●18-69〇 京都産業大

<出場選手>

 早稲田京産大
氏名学年氏名学年
1石嶋照幸4年佐藤友幸4年
2萬匠祐基3年野山隆二3年
3山口吉博4年木下 剛4年
4中西 聡4年池田篤人2年
5山﨑隆司3年内野 聡4年
6井手上敬太2年池上王明3年
7沖 覚4年岡本宗太3年
8吉上耕平4年平田政喜1年
9月田伸一4年吉原武則4年
10山崎弘樹1年山岡宏哉4年
11倉成 隆4年佐藤貴史4年
12山﨑勇気3年奥 亙4年
13小森允紘2年鈴木啓明3年
14石川安彦4年岡田吉之4年
15吉永慧侃4年大畑大介4年

大学選手権決勝で明治に敗れ、無念のままシーズンを終えた『中竹組』の翌年。

WTB石川安彦主将(日川)、FL吉上耕平選手(筑紫丘)、SH月田伸一選手(東福岡)、SO速水直樹選手(東農大二)ら、下級生時代からチームを支えてきたメンバーが最終学年を迎えた1997年度。

慶應、明治に敗れながらも対抗戦2位で選手権へ乗り込んだ『石川組』の前に立ちはだかったのは、”日本の至宝”大畑大介主将(当時4年/東海大仰星)率いる京都産業大学でした。

この年の関西リーグで、全勝優勝を果たした関西王者の猛攻にさらされた早稲田。

易々と外されるタックル、次々と割られるゴールライン。

奪われたトライは前後半通じて実に11本、そして積み重ねた失点は”69”。

1990年にラグビーに出会った私にとって、早稲田がここまで完膚なきまでに叩きのめされた試合は初めてのことでした。

この時の衝撃は、20年以上経った今でも忘れることができません。

 

ただ、この年の京産大は、

卒業後に神戸製鋼でも活躍したFL池上王明選手(当時3年/東海大仰星)、強力なフィジカルを持つFL岡本宗太選手(3年/花園)、スピードとバネのある走りが魅力の平田政喜選手(当時1年/布施工)の第3列は個人的に京産大史上最強レベルの破壊力を有し、

大畑選手に匹敵するほどの高い決定力を誇る、WTB佐藤貴史選手(当時4年/和歌山工)とWTB岡田吉之選手(当時4年/啓光学園)を両翼に配すバックスリーは豪華そのもの。

さらに、野性味溢れる司令塔のSO山岡宏哉選手(当時4年/天理)がチームに躍動感を与え、後に日本代表にも選ばれるPR木下剛選手(当時4年/東海大仰星)がスクラムを支える超強力布陣。

理屈なしに強かったと言わざるをえません。

今改めてこの試合を振り返っても、いいラグビーをしているのはやはり京産大の方でしょう。

 

それでも、この年から低迷期に入っていく早稲田にあって、唯一救いだったのは、前半16分月田伸一選手の華麗なバックフリップパスから生まれた、WTB倉成隆選手(当時4年/西武文理)のトライ。

この試合をもう一度見返すのはなかなか勇気が必要ですが、このトライは何度見ても気分が高揚します。

そしてもう一つ、

忘れられないのは、この年、2年前の選手権決勝で負った大怪我からの復帰を果たしながら、対抗戦の筑波大戦で再び負傷し、失意のままシーズンを終えたSO速水直樹選手の存在。

華麗なステップと卓越したパスワークでチームを牽引した天性のゲームメーカー。

もしこの選手がいれば....

月田選手とのHB団が実現していたなら...

その無念の思いは今も消えることはありません。

 

第2位 1999年度 対同志社大学

1999年12月25日@花園ラグビー場

大学選手権 2回戦

早稲田大 ●6-43〇 同志社大

<出場選手>

 早稲田同志社
1成田清志南 知積
2大内和樹水間良武
3小林商司尾崎 章
4佐藤喬輔林 廣鎬
5脇 健太藤井航介
6上村康太太田 聡
7井手上敬太奥薗裕基
8江原和彦川嵜拓生
9辻 高志見先恒郎
10福田恒輝大西将太郎
11山下大悟中矢 健
12小森允紘伊勢裕介
13髙野貴司松本大輔
14艶島悠介馬場大策
15長井真弥船越稔幸

高校卒業後、早稲田進学を目指し浪人生活を送っていた1999年度。

年明けから始まる受験シーズン本番を前に自らを奮い立たせるべく、当時受験勉強のために通いつめていた門真市の図書館から、一人原付を飛ばして向かった先がこの試合。

大学選手権2回戦で実現した早稲田同志社の『花園決戦』。

それまで早稲田戦をテレビでしか見たことのなかった私にとって、これが記念すべき”早稲田初観戦”の試合でした。

しかし、この年の同志社は、HO水間良武選手(当時4年/大工大)、PR尾崎章選手(3年・長崎南山)、
SO大西将太郞選手(当時3年/啓光学園)らフォワード・バックス両方に豊富なタレントを擁し、3年ぶりに京産大から関西の覇権を奪回した難敵。

前年度から提唱していた”クイック&ワイド”に固執するあまり、セットプレーやブレイクダウンなどの肉弾戦に脆さを見せていた早稲田にとっては、非常に分の悪い相手でした。

試合は案の定、攻守両面で同志社に圧倒され、1本のトライすらも奪えない完敗。

地元同志社の快勝劇に大歓声が沸き起こるスタンド。

その陰で一人小さくなり、為す術なく押されるスクラムを見守る浪人生。

そのスタンドから見た光景は、今でも苦い思い出として心に記録されています。

 

早稲田の”観戦デビュー”は、残念ながらほろ苦いものとなってしまいましたが、早稲田の山下大悟選手(桐蔭学園)、上村康太選手(国学院久我山)、同志社の奥薗裕基選手(天理)、中矢健選手(大阪桐蔭)ら、同学年の選手達の活躍に、大いなる刺激を受けた自分がいたことも事実。

この日の花園が、私にとって受験ラストスパートへの原動力となったことは間違いありません。

 

一方、この試合に快勝した同志社は、その後準決勝で慶應義塾大と激突。

試合は、この年創部100周年の復活優勝を遂げるチーム相手に、後半ロスタイムまで19-22と肉薄する大激戦。

大学選手権準決勝 同志社対慶應義塾↓

同志社はその後も数年間、コンスタントにベスト4へ進出するようになりますが、近年で最も日本一へ近づいたのはこの年のチーム。

そう思えるほどに、攻守にバランスの取れた素晴らしいチームだったと記憶しています。

 

第1位 2010年度 対帝京大学

2011年1月9日@国立競技場

大学選手権 決勝戦

早稲田大 ●12-17〇 帝京大

<出場選手>

 早稲田帝京
氏名学年氏名学年
1上田竜太郎2年吉田康平3年
2伊藤平一郎2年森 太志4年
3垣永真之介1年西村尚記3年
4岩井哲史4年菅原貴広4年
5中田英里4年ティモシー・ボンド3年
6中村拓樹4年ヘンドリック・ツイ4年
7山下昂大3年吉田光治郎4年
8有田隆平4年柴田一昂4年
9榎本光祐4年滑川剛人3年
10山中亮平4年森田佳寿3年
11中濱寛造4年富永浩史4年
12坂井克行4年南橋直哉3年
13村田大志4年黒川勝平4年
14中靏隆彰2年鬼海雄次4年
15井口剛志3年竹田宜純1年

大学選手権準決勝で、宿敵・明治を74-10と早明戦史上最多得点で粉砕し、2年ぶりに決勝の舞台へと駒を進めたこの年の早稲田

決勝の相手は、前年度選手権2回戦で早稲田連覇の夢を打ち砕き、そのまま初の頂点へ登り詰めた帝京大学

前評判は帝京が有利。

それでも、有田隆平主将、山中亮平副将を中心に各ポジションへ豊富なタレントを擁し、対抗戦では帝京相手に33-14と快勝を収めていた『有田組』。

リベンジの可能性は高い、と個人的には見ていました。

しかし結果は、ラインアウト、スクラムを制圧され、フィールド上でもポゼッションを重視してきた帝京の『ファイナルラグビー』の前に完敗。

自軍の強みを最大化し、相手の強みを最小化する。

全ては”ファイナル”に勝つためのラグビー。

勝つための”常套手段”であると頭では理解しながらも、ブレイクダウンにおけるレフリーの解釈の違いも手伝って、見ていてここまでフラストレーションがたまり、無力感を感じた試合はありません。

真紅の壁”に跳ね返された早稲田は、結局この年を含め11年間優勝から遠ざかり、帝京にはこの年を最後に公式戦で9年間勝つことすらも出来なくなっていきました。

 

昨年、早稲田は大学選手権決勝で明治を破り、11年ぶりの『荒ぶる』奪還に成功。

対抗戦では帝京相手にも、齋藤直人前主将(現/サントリー)の劇的トライで、9年ぶりとなる勝利を挙げることができました。

しかし、決勝で敗れた2010年度の『有田組』、そして2013年度『垣永組』の借りは、まだ返したとは言えません。

決勝の借りはやはり決勝で。

今年の大学選手権決勝で両雄が相まみえ、激闘の末、2連覇を達成することができたなら、、、

想像するだけで胸がワクワクしてきますね。

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