去る5月10日に日本開催2019年ラグビーワールドカップ(W杯)の組み合わせ抽選会が京都迎賓館で行われました。
抽選会には安倍晋三首相、レスリング吉田沙保里選手がプレゼンターを務め、また”アイルランド、イングランド以外での抽選会開催は史上初”という意味でも日本のファンだけでなく、世界にもW杯日本開催のPRをする上で、いい機会だったのではないかと思います。
ただ、なぜ2019年W杯の抽選会がこの時期なの!?
そう思われた方も多いのではないでしょうか。
ここでは抽選会のタイミングとその組み合わせ結果を見て行きたいと思います。
<RWC2023組み合わせ↓>
【予選は因縁だらけ!?】ラグビーワールドカップ2023 組み合わせ決定
ラグビーW杯2019抽選会
なぜこのタイミング!?
本大会の開幕日が2019年9月20日という事を考えると、約2年半も前のこのタイミングで行われる事に違和感を感じられた方も多かったのではないでしょうか?
サッカーW杯の場合には開催の約半年前に抽選会が行われる事を考えれば、私自身もやはり違和感を感じます。
今回日本は2015年大会でグループリーグ3位に入ったため、シードで出場権を獲得していますが、これは実は初めての事で、今までは本大会出場の決定前に抽選会が行われていたため、出場を決めたら組み合わせが決まっているという不思議な状況が生まれていました。
出場決定前なので自分が抽選会に全く注目していなかったという事もあるかもしれませんが。。。
ただ、このタイミングでやる事に関して、スーパーラグビー(旧IRB)会長のビル・ボーモント会長は次のように語っています。
「プール組分け抽選会はラグビーワールドカップ2019日本大会に向けた重要なマイルストーンです。
開催国のみならず世界のラグビーファミリーがワールドカップに向けて大変盛り上がりますし、出場チームやファンたちがそれぞれの『ラグビーワールドカップ2019日本大会』を描き始めるタイミングでもあります。
このプール組分け抽選会を大会の2年半前に行うことで、ラグビーワールドカップリミテッドおよびラグビーワールドカップ2019組織委員会としても、放送権を有する放送局各社や、試合会場・公認チームキャンプ地および出場チームが計画・準備を適切に行えるような期間を最大限に確保した形で大会スケジュールを策定することが可能になります。」(ワールドラグビーHPより)
まぁ要は円滑な事前準備期間を各チームへ与える事と共に商業的側面を加味したスケジュールだという事でしょう。
しかし、実際にまだ予選を戦っているチームが複数ある状態で、その振り分けが決まっていたとすれば、本来なら“本戦出場を賭けた純粋な真剣勝負”であるべき予選に水を差す形になってしまうのではないでしょうか?
例えばオセアニア地区なら「予選1位なら“死の組”に入る事が決まっているため、敢えて2位で行こう、いやプレーオフの相手を考えたら3位の方がいいかも。」などなど。
全精力を注ぎ込まなければ列強国ですら本大会の出場が危ぶまれるサッカーのW杯予選と異なり、ラグビーW杯の場合はある程度常連組は固定されているため、この抽選会スケジュールはそういう意図的な戦略が絡む可能性は否定できませんし、そういう穿った見方をされる事にもなってしまうと思います。
純粋に予選、本大会を楽しみたいと思っているファンにとっては、そういう意味ではネガティブな側面もあるシステムだと感じます。
やはりサッカーのように出場国が出揃った状態のタイミングで、”抽選会が行われる日に全対戦国が決定する”というシステムの方が、見ているファンにとっても純粋にスリルとワクワク感が味わえるものだと個人的には思います。
バンド分け
組み合わせ結果に入る前に私のコメントがむしろ水を差す事になってしまいましたね。。。
申し訳ございません。
それでは抽選会結果のお話に移ろうと思います。
まずは組み分けの基準となるバンド分けから見ていきます。
バンド1 | ニュージーランド(1位) | イングランド(2位) | オーストラリア(3位) | アイルランド(4位) |
バンド2 | スコットランド(5位) | ウェールズ(6位) | 南アフリカ(7位) | フランス(8位) |
バンド3 | アルゼンチン(9位) | 日本(11位) | ジョージア(12位) | イタリア(15位) |
バンド4 | オセアニア1位 | アメリカ1位 | 欧州1位 | アフリカ1位 |
バンド5 | オセアニア2位 | アメリカ2位 | プレーオフ(欧州2、オセ3)勝者 | 最終予選勝者 |
ラグビーW杯の場合は前回大会でグループステージ3位までに入ると自動的に次回大会の出場権が与えられるため、バンド1から3の12チームは予選なしで既に出場が確定しています。
その中で”5月1日付け世界ランキング”の上位順にバンド1から3に振り分けられます。
日本は前回大会で史上初の3勝を挙げグループステージ3位に入り、現在世界ランキング11位の為、初のバンド3入り。
一方でその前回大会で日本に敗れ、”歴史的番狂わせ”を喫した南アフリカは、決勝トーナメントでは何とか立て直し最終的に3位に入るも、その後も状態は上がらず、ランキング7位でまさかのバンド2へ。
バンド3となってしまったアルゼンチンと共に、“死の組”形成のキーを握る存在となりました。
組み合わせ決定
さぁ世界中のラグビーファンが注目する緊張感の中、以下のプレゼンターの手により組み合わせが決定しました。
プレゼンター | |
---|---|
安倍晋三首相 | 内閣総理大臣 |
吉田沙保里選手 | レスリング五輪3連覇 |
坂田好弘関西ラグビー協会会長 | 日本人初WR殿堂入り |
スティーブ・ハンセンHC | ニュージーランド代表HC |
ビル・ボーモント会長 | ワールドラグビー会長 |
抽選の模様はNHKで生中継され安倍首相の出席で注目されたので、ご覧になられた方も多かったと思います。
ただ、サクサクと同じリズムでどんどんボールがポッドから引かれていく光景には、「もうちょっともったいぶって引いてくれ!」と言いたくなりましたね(笑)
プールA
プールA |
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アイルランド(4) |
スコットランド(5) |
日本(11) |
欧州予選1位 |
欧州・オセアニアPO |
我らがジェイミー・ジャパンはこのグループに入る事が決定。
バンド1からはアイルランド、バンド2からはスコットランドが選ばれました。
皆さんの感想は如何でしたか?
まず、私の最初の印象は“ラッキー!”でした。
何故ならバンド1、2ともにグループの中では1番力が落ちると見ており、何よりNZ、豪州、フランスのようにどちらかというとジャパンが苦手とする”フィジカルとスピードを併せ持つ国”との対戦を避ける事が出来たからです。
もちろん、アイルランドは昨年オールブラックス(NZ)を史上初めて破る快挙を達成するなど、今まさに伸び盛りのチーム、そしてスコットランドには前回大会でも唯一土を付けられ、昨年6月に行われたテストマッチでもジャパンは連敗しています。
簡単に勝てると思ったら大間違い。
今からベスト8進出が見えてきたなど楽観視するつもりは全くないのですが、両チームともクラシックなラグビースタイルであり、フィジカルで健闘する事が出来れば、ジャパンの工夫次第で試合を作る見込みが立てれる、という部分では組し易い相手と言えるのではないでしょうか。
プールB
プールB |
---|
ニュージーランド(1) |
南アフリカ(7) |
イタリア(15) |
アフリカ1位 |
敗者復活 |
まずこの組だけは避ける事が出来て良かったという印象です。
世界最強オールブラックス(NZ)と過去2度の優勝を誇るスプリングボクス(南ア)が同組。
このグループを突破するにはまず確実にこのどちらからか白星を上げなければいけません。
日本は前回大会南アを破っていますが、それは“全スポーツ史上最大の番狂わせ“と言われており、南アも今度はしっかり対策を取って来るでしょうし、2大会連続でその番狂わせを演じる事は限りなく難しいと言えます。
その意味ではこの組だけは是が非でも避けたかったところでした。
バンド3から入ったイタリアにはお気の毒としか言いようがありません。。。
プールC
プールC |
---|
イングランド(2) |
フランス(6) |
アルゼンチン(9) |
アメリカ大陸1位 |
オセアニア2位 |
今大会の“死の組“はやはりこのプールでしょう。
前日本代表HCのエディー・ジョーンズ(現イングランドHC)は会見で「このグループを“死の組”と呼ぶ人は会見場から出ていって下さい」と冗談交じりに語ったようですが、イングランドは前回大会でも開催国として初めて予選グループ敗退という大失態を演じており、2大会連続の失態は“ラグビーの母国“にとって許されるべきものではありません。
エディー流のジョークなんでしょうけれど、そう言いたくなる気持ちは分かります。
この組はフランス、アルゼンチンの三つ巴に加え、恐らくオセアニア2位で出場するであろうサモアも難敵のため、チームは現在絶好調とは言え、イングランドも突破は安泰ではなさそうです。
プールD
プールD |
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オーストラリア(3) |
ウェールズ(8) |
ジョージア(12) |
オセアニア1位 |
アメリカ大陸2位 |
現在スーパーラグビーで苦戦が続くオーストラリアにとってはこの組み合わせは願ってもない結果ではないでしょうか。
ウェールズ、ジョージアとそれぞれのバンド内ではランキング最下位のチームと同組となった事で、グループリーグは落ち着いて戦う事ができそうです。
“オセアニア1位枠”で上がって来るであろうフィジーは強敵ですが、力関係から見るとオーストラリア、ウェールズでまず固そうです。
現在出場権を賭けて激戦が繰り広げらている各地予選は、2018年11月までに全日程が終了し、全ての出場国が出揃う予定です。
来月6月にジャパンはプールAで同組に入ったアイルランド、そして欧州予選1位通過が濃厚で同組に入る可能性の高いルーマニアとのテストマッチが組まれています。
W杯に向けた絶好の試金石となるこのカード。
どのような布陣で臨むのか!? どのような戦いを見せてくれるのか!?
そしてこの2年の間にジェイミー・ジャパンがどこまで成長するのか!?
初のベスト8進出を懸けた戦いを開催国として迎える日本。
今後も目が離せない戦いが続きます。
<RWC2023組み合わせ↓>